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□隣
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夕方。
朝からパチンコに行って珍しく勝ったカイジは両腕に袋を抱えながら、家へと向かっていた。

アパートまでの最後の角を曲がったとき、見慣れた姿を見付けた。

裏では神域と呼ばれている白髪の赤木しげるを。


塀に寄り掛かっていて、その足元には大量の煙草の吸殻が落ちている。

慌ててカイジは駆け寄ろうとしたが、よく見ればその周りには取り巻きの黒服。
その中にいる赤木しげるが妙に合っていて声を掛けるのにも戸惑った。


常に天賦の才で勝ち続け負け知らずの赤木の隣に、追い込まれて生きたいが為に漸く力を発揮出来る自分程度が居ていいのか。と。

こうして改めて黒服達の中にいる赤木を見ると、どうしても自分とは別のように思えてならない。


呆然と立っていたカイジはつい腕の力が抜け袋を落としてしまった。
その音で気が付いた赤木が黒服達に指示をして返させると、煙草を片手に近付いてくる。


「よう。カイジ」


気さくな態度に一瞬安心はするがわだかまりは胸に残ったまま、カイジは笑顔を作る。


「久しぶりですね。急にどうしたんすか?」


「ん?お前に会いたくなったからな」


相変わらず急で気分屋だと思いながらカイジは落とした袋を拾おうと屈む。
しかしそれより早く赤木は動き、先に拾い上げてしまう。


「珍しくずいぶんと勝ったじゃねーか」


「珍しくは余計ですよ」


「はは。まぁ気にすんな」


他愛もない話をしながら二人はアパートの錆付いた階段を上がり、部屋へと入っていった。





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