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□猫
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「毎回思うけどさぁ」
服を纏わず布団に入り、枕をの上にうつ伏せの状態で煙草を吹かす赤木の背中を見てぽつりと天が呟いた。
「あんたのこの傷、すげぇそそる」
肩にある古傷を指先を這わせどこか嬉しそうに。
暗がりの中で煙草の小さな火にすら映える白い身体に残るその傷を、天は気に入っていた。
「傷に発情するって、なんだそりゃ」
吸い込んだ煙を吐き出しながら呆れたように笑う。
そんな赤木に覆い被さりながら、天は耳元に口を寄せた。
「だってあんた普段白いけど抱いてる時は赤くなって煽られるのに、傷のとこだけ白いままで目立ってさ。妙に色っぽいし」
「ふぅん。俺はお前の見てもなんも思わねぇけどな」
顔を横に向けて間近にある鼻を摘み、また甘い雰囲気に持っていこうとする天をいなす。
簡単にあしらわれた天は不満気に口を尖らせた。
「むぅ…。もう一回くらいいいじゃないっすか」
「俺を殺す気か?」
半分冗談で半分本気で。
顔を引きつらせながら言う赤木に仕方ないと諦め、隣へごろりと寝転んだ。
「ちぇっ。せっかく久しぶりに会えたのに」
そう言いながらも天は笑顔を浮かべ、赤木の横顔を眺める。
整った目鼻口と年齢相応に刻まれた皺。
麻雀をする時とは違う緩やかな視線。
それを見るたび、一緒に卓を囲んでいる時と別な興奮を毎度覚えていた。
短くなった煙草を近くに置いていた灰皿に押し付け、赤木も天と同じように寝転ぶ。
頭は丁度良い位置にあった天の腕へ乗せて。
「ならまず加減ってもんを覚えるんだな」
言って目を閉じ、寝心地が良くなるよう頭を動かす様子に猫みたいだと天は微笑んだ。
「おやすみなさい。赤木さん」
「ん…」
返事と共に増した重みを腕に感じ、天も目を閉じる。
朝になったらまたふらりとどこかに行く赤木が思い浮かび、いることを教えなかったひろに散々文句を言われるだろうな。
と考えながらやってきた睡魔に身を委ねた。
End