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□好き?
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「カイジさんって結構俺のこと好きだよね」

煙を吐き出しながら唐突に言われた言葉に、カイジは吐き出し害ねた煙のせいで盛大に咳き込んだ。
肩を揺らしながら煙草を落とさないよう灰皿に放り投げた。
苦しさのあまり涙を浮かべる姿を見ながら原因である当の本人は、あらら大丈夫?と気にする風もない。

「な、なに言いだすんだよ急に!」

ぜーぜーと肩で息をしながらカイジが言うと、アカギはまた煙を吐き出す。

「なんとなくそう思ったから」

そう言って口元に笑みを浮かべ真っ直ぐ見つめてくる目が、カイジは好きで苦手だった。
そもそも見つめられることも視線を合わせることも苦手なのに、アカギの視線はぶれることなく自分だけを映す。それが嬉しいような恥ずかしいような、妙な気分になって。
対してアカギはカイジを見つめることが好きだ。普段はやる気の欠片さえない目のくせにギャンブルを目前にした時のギャップ、見つめた時の照れた様子。
その全てが新鮮で可愛く思えた。

「違った?」

半分の長さになった煙草を片手にカイジへとにじり寄る。視線は外さない。
縮まる距離に見てわかる程焦りを浮かべて狼狽える。
空気に触れ続ける煙草がジリ、と音をたててまた短くなった。

「ねぇ、カイジさん」

名前を呼び、手が赤い頬に伸びる。指先が触れたか触れないかのところまで迫った途端、耐えきれなくなったカイジは勢いよく立ち上がった。

「ゆ、夕飯の買い物してくる!」

叫ぶように言って転びそうになりながら靴を履いて、上着も着ずに外に飛び出した。
時間は三時を少し回ったところ。夕飯の買い出しにはまだ早い。
しかも面倒くさがりのカイジは、いつも着ていく上着のポケットに財布を常に入れている。

一文なしでどうやって買い物をする気なのか。

アカギは若干呆れ、けれど真っ赤な顔をして逃げた可愛いギャンブラーを追うため、すっかり短くなった煙草に口をつけてから揉み消して靴を履く。
余程慌ててのか並んでいた靴はばらばらに飛び散っていた。
錆びた音をあげるドアを開けて、まだ冬の名残の寒さを感じながら外に出た。

残された灰皿に放り投げられたままの煙草は長さを保ったまま灰と化していた。



End


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