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□交代
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「銀さん…」

請うような声と熱い視線。若さ故か森田はその欲を隠そうとはしない。
普段はその若い勢いに任せ流れのまま事に運ぶ。が、今夜の銀二は機嫌が良かった。
綿密な計画を立て何度も確認を繰り返し、大きな仕事をようやっと終えてゆっくりと過ごせるのだ。機嫌も良くなる。

ちゅっと軽いキスを受け入れながら吸いかけの煙草を灰皿にねじ込んで、ぼんやり文字通り目の前の青年を見つめる。
銀二には特に上下の拘りはない。森田が上がいいと言うならば勝手にさせるし、ここ最近は大体銀二が下だ。
だが今夜はなんとなく交代しようと思った。そんな気分だった。

ネクタイを掴んで引き寄せて舌で唇を抉じ開け、軽いキスから深いものへと変える。
きっちりと締められていたネクタイは仕事の後に緩めたのか、首と結び目の間に隙間が出来ていた。

「…ん…っ!」

予想外の銀二の行動に驚いたのかくぐもった声を森田があげ、腰を抱いていた腕の力が緩む。
その隙に銀二は足を掛け森田をベッドに押し倒し、ベッド脇での行為は終わりを告げた。

柔らかいマットとスプリングのおかげで背中に痛みはない。けれどいきなり変わった視界にきょとんとした。
さっきまで見えていたのは銀二とベッドとカーペットの敷かれた床。今見えているのは天井と自分を跨がる銀二。

「えと…銀さん?」

黙々と自分のボタンが外されていく様を眺めながら呼んでみれば、シャツをの前を全開にしてから漸く銀二はなんだ?と返事をした。

「この状況はどういうこと…?」

「森田。今日お前下な」

やっぱり。
視線を銀二から天井に首ごと動かして小さくため息を吐いた。

森田も銀二と同じく上下に特に拘りはない。だが銀二ほど割り切れてないというべきか、男としてのプライドの問題というべきか。
下になるより上になることを好んでいた。
だから大体は上になるし銀二もそれで納得してくれているが、時たまこういった気分によって交代する。

不満が全くないと言えばまぁ嘘になるが、わざわざ拒否するほど嫌なわけではない。
嫌なわけじゃない、けど。

「…次はオレが上ですからね」

既にバックルを外し始めている銀二を視界の端で捕らえながら、せめてもにと言ってやれば笑いを含んだ声で、はいはいと返された。



End


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