素敵小説

□35000ヒットリク企画・甘甘な1913
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■35000ヒット記念(サイ様江・甘甘な1913)

くしゅん、とひとつ。
自分自身の可愛いくしゃみで目を覚ました13は、うつらうつらしながら毛布を引き寄せると、しかしそれが寒さを遮るには心許ないことに気がつきました。
台風一過の9月初め。
夏休み明けなのに寒暖の差が激しく、寒さで寝付けない夜のことです。
寝ぼけ眼で猫しげるの姿を探しましたが、あいにく見当たりません。
丸まって寝んねする仔猫を抱っこして、天然の湯たんぽにしようと思ったのに。
きっと寄る年波には勝てっこない53のお布団に潜り込んでは、ぬくぬくにしてるのでしょう。
しょうがないやと溜息をついた13は、お納戸からもう一枚お布団を持ってこようと寝室を出ました。

夜にご不浄に起きる神域二人や、遅くに帰ってくることの多い19の為に、しげるハウスの廊下には足元を照らすナイトランプが灯されていました。
怖い話を聞いた時にはちょっぴりドキドキですが、眠さが勝ってる13にはなんてことありません。
てとてとてとと、と歩いては…。
「う、わ!」
「どうした、眠れなくなったか」
不意に開いたドアに驚いた13は、思わず大きくなってしまった声を封じるよう、両手でお口を塞ぎました。
現れたのは、そっちこそ寝付けなかったのでしょう、ハイライトの薫りを纏った19の影。
「どうにも寒くてさ。納戸から布団持ってこようと思って」
「日に当ててないから湿気ってるぜ。俺くらい年取って神経太くなったら何処でも寝られるけど、お前濡れたシャツの侭でいられない程度には、身の回りを気にするだろ」
「う〜ん…」
確かに19は、組のお兄さん達が用意してくれたお布団で寝られる程に肝が据わってましたが、13は海水のべとべとが気になっちゃう位には繊細でした。
春のうちにお日様に当ててふかふかにして、布団袋に入れてたけど、やっぱりお納戸独特の匂いが移っちゃって。
もう一遍日に当てないことには、気になってしょうがありません。

さてどうしようか。
13が小首を傾げて思案していると、19がちょいちょいと手招き。
眠たさも手伝って近づけば。
「ちょ、19?!」
「声でかい。年寄りが起きてくるぞ」
なんと言うことでしょう。
無駄に器用な19は、近寄ってきた13の左肩と右膝裏をくいっと押してはバランスを崩させ、ひょいと抱き留めてしまったではありませんか。
軽やかに担ぎ上げては、先ほどまでぬくまっていたお布団に一直線。

「わっぷ!」
「ここで寝たほうが良いだろ」
19一人でも充分に広い羽毛布団。
13は抵抗する間もなく転がされ、しかし19がいかがわしいことをする気がないと悟ると、大人しく丸くなりました。
「新型インフルも怖いからな。あったかくして寝ろ」
頭を撫でてくれる手は、兄のように優しい手で。
「19…」
「なんだ?」
「…ありがと。おやすみ…」
そのまますとんと眠りに落ちた13に苦笑すると、19も「おやすみ…」と呟いては、その形の良い額に口付けるのでした。







深草地広様宅の35000ヒットリク企画で有り難く頂きました!
深草様の書かれる仲の良い二人が素敵で、ついつい市アカサイト様にアカアカを書いて頂きました…!兄のような優しい19やふとした瞬間に素直になる繊細な13が可愛いです!

深草様ありがとうございました!


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