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□遠き日の想い出
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【遠き日の想い出】
『おまえトモダチいねーのか?』
『…うん』
『じゃあ今日からオレがおまえのトモダチになってやるよ』
『うん!』
…正直、なんで友達になってやるなんて言ったのか…今でも解らない。
けどその出来事はよく覚えてる。
その日は俺が4歳になった5月7日だったから……
俺と氷斗が『友達』になった日―――
幼稚園児ながらもその当時の俺には氷斗が『生きている人形』のように思えた。
男の子なのか女の子なのかもわからない、だがすごく綺麗に整った顔立ちをしていたから―――俺は興味を持った。
初めて話し掛けた時は緊張した。
ちゃんと笑ってくれるのかな?って。
触れてしまったら壊れてしまうのではないかと……
でも話し掛けたら返事してくれたり、遊んだら笑ってくれた。
ただの人見知りが激しい恥ずかしがり屋。
それだけの…本当は素直でいい子だった。
―――だがそれは
俺たちが小学生になった年の夏休みに起きた出来事によって
失ってしまったモノだった……
***