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□君は光、僕は影
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――始まりは、桜舞い散る暖かい春だった
まるで雪が花を咲かせるようにその桃色の花びらははらり、はらりと舞い落ちる。
あれは10年前――僕たちがまだ小学生になったばかりの頃…
理由はよく覚えていないけど、あの時僕は翔とケンカして…
走って転んで、擦りむいた膝が痛くて……
公園の桜の木の下で一人泣いてた。
泣いたまま家に帰りたくなかったし、家が隣の翔とも会いたくなくて……
でもその時、一人の女の子が声を掛けてくれた。
大丈夫?って。
藍色の髪、深い海の色の瞳をした少女……
どこかで会ったことがある。
そうだ、同じ幼稚園に通ってた子だ。
僕は急いで涙を拭い取り、これくらい平気だよ。と、そっけなく返事をした。
でも彼女は
「ケガしたから泣いてたんじゃないよね?痛いから泣いてたんでしょ?」
………え?
心を見透かされたかのようで不思議な気分だった。
確かにその時僕は翔とケンカしたことが哀しくて……転んだから泣いた訳じゃない。
僕はその子に友達とケンカしたんだ、って言った。
そしたらその子は「仲直りできるといいね!」って言ってくれて、擦りむいた僕の膝に白いハンカチを巻いてくれた。
1ねん1くみ ひびきしき あまの
ハンカチにはそう名前が書いてあった。
彼女のお陰で、僕は二つの痛みが一気に消えてなくなったみたいに気分が軽くなった。
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