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□遠き日の想い出
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元々、俺たちの親同士は知り合いで、俺の母さんと氷斗の母さんは同じ中国の出身だった。



母さんたちが夏に中国へ行く事になって、母さんから離れたくない氷斗も一緒に行く事になった。













しかしその中国行きの便は空へ起つことなく、エンジントラブルによって大事故が起きた。





10年前の8月7日……忘れねぇよ……





剣道の小学生大会に出場していた俺が家に帰った時には親父は家にいなかった。


兄貴と弟の大地、あと氷斗の弟の彰と昇が来ていただけだった。









兄貴はテレビを点けて、これ今朝母さんが乗った飛行機だって一言。









頭が真っ白になった。












奇跡的に氷斗は助かった。








けど母さんは………












その日の夜、俺たち兄弟が泣き疲れて眠った後……親父が静かに涙を流していたのを俺は見た。



















その時から氷斗は変わってしまった。





何を言っても――何をしても――





――笑わなくなった












例え笑ったとしても、それは他人をバカにする時か…嘲る笑いだった。





本当に心まで氷になってしまったようだった。





それでも俺とは親友でいてくれた。


次第に他人に興味を持たなくなった俺だけど、氷斗は必要としてくれた。





誰も寄り付かなくなった俺たちの前に現れたのが――昴と亮希だった。








それから氷斗を慕うヤツらが増えて行った。



帝煌学園に入学してからは尚更だった。










やがて俺は思い出してしまった―――










その前世の記憶には、氷斗に―――最愛の女性と引き離された記憶があった。





……嘘だろ?





ずっと捜していた人物は前世に別れた恋人だった。





それを引き離したのが――氷斗?









初めは冗談だと思った。











―――だがそれは事実―――





氷斗と居ると…あの時の憎しみで胸が苦しくなった。




ダメだ……このままじゃ……









氷斗と離れたかった。





友達のままでいたかったから―――!!









すべてを忘れるつもりだったけど…


転校した学校で俺は出逢った――――









「わたしは響色天。よろしくね」


「ああ……―――!?」












俺と彼女が出逢った為に―――


運命の歯車は…糸が絡まり


再び永き時代を蘇らせたのだろう………







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