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□君のとなり
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〜君のとなり〜
季節は冬。
街は所々にイルミネーションやネオンの光が灯され、クリスマス特有の賑わいを見せていた。
「やっと買えたね〜☆」
「うん!ここのケーキ屋さんスッゴく人気あるからね」
住み慣れた街から少し離れたショッピングモール街の一角で、恵と月慧はケーキの箱を見ながら嬉しそうに笑った。
前々から2人でケーキを買いに行こうと話を進めてきて今日に至る訳だが、ショッピングモール内に最近出来たばかりのケーキ屋とあって、店の前には長い長い行列ができ、2人は一時間程前からそこに並んでいたのだ。
「恵ちゃん何買ったの?」
「恵はね〜、チョコレートケーキ!!月慧くんは?」
「僕はね〜、シュークリーム買ったんだぁ」
「あ、そういえばここのシュークリーム、クッキーの生地とパイの生地使ってるからスッゴくサクサクなんだよね☆」
「うん!絶対においしいよ!!」
「いいな〜、恵も今度買お〜っと!」
お目当てのケーキを買って大満足の2人は、そんなたわいもない話をしながらイルミネーションの輝く、夕日の道沿いを歩いていた。
そうして店の角を曲がった時、ふいに2人の前に何か小さなものがうずくまっているのが目に入った。
「あれ?」
「…ん〜?」
近づいて良く見ると、それは自分達よりも遥かに小さい女の子の姿。
しかし周りには親らしき人の姿は無く、どう見ても1人のように見える。
「…ねぇ、こんな所でどうしたの?」
不思議に思った月慧がしゃがんで優しく声をかけると、女の子は少しだけ顔を上げ、2人の顔を見た。
その顔は涙で目が真っ赤になり、寒さのせいか、小さな頬はほんのり赤みが射していた。
「…いえ…でっ…してき、た…のっ…」
女の子は下を向いて、ポロポロと涙を流しながら答えた。
「家出!?」
予想外の答えに驚いた2人は、互いに顔を合わせ目をパチクリとさせる。
どうやら、何か事情があるようだ。
「とりあえず、ずっとこの場所にいるのも何だから、公園にでも行こうか」
「…お兄ちゃんお姉ちゃんも…一緒にいてくれるの?」
「うん!一緒に行こう☆」
恵が笑って女の子に手を差し出すと、女の子は袖で涙を拭い、おずおずと恵の手を握った。
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