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□君のとなり
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「……サっ……ミサ―――っっ!!!!」
その時、遠くの方でミサを呼ぶ声がした。
「……ま……ママ…?…ママ―――――っ!!!!」
ミサは大声で叫んだ。
そしてその声を聞いたミサの母親は、思い切り声のした方を振り返り、息を切らせながらミサのいるベンチへと走ってきた。
「ミサ!!今まで何してたの……ッッ!!」
ミサの母親はミサを思い切り抱きしめると、こらえ切れない涙を流した。
「ママ…っ、ミサまでいなくなったらどうしようって……ううッ……」
「…だって…ママ……ッ…泣いてばっかりなんだもん!!」
「……うん……ゴメン…ッ…ゴメンね、ミサ……」
「……ママ…」
ミサは母親を優しく抱きしめると、同じように涙を流す。
「良かったね、ミサちゃん!!」
恵が笑って声をかけると、2人の様子に気付いた母親は、立ち上がって頭を下げた。
「あなた達がミサを……、あの、何てお礼を言ったらいいのか…」
「あ、いえいえ!僕達もちょうど帰る所だったので」
「恵、ミサちゃんと一緒にいれてスゴく楽しかったです☆」
「そうですか……良いお兄さんお姉さん達に会えて良かったわね、ミサ」
「うん!…それにね、サンタさんからプレゼントも貰ったんだよ!!パパがね、サンタさんにお願いしてくれたんだって!!」
そう言ってミサがケーキの箱を持ち上げて見せると、母親は少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んでミサの頭を撫でた。
「そう…。……パパは、きっと今も私達の近くにいて、見守ってくれているのよね……」
「うん…!ミサ、ママもパパも大好き!!」
ミサが笑顔で母親の手を握ると、母親も嬉しそうに微笑み、手を握り返す。
そしてふいに鳴りだしたクリスマスの鐘の音が、優しく街中に響き渡った……。
◇◆◇◆
「ねぇ、月慧くん」
「なぁに恵ちゃん?」
ミサとミサの母親が帰るのを見届けた後、2人はもうすっかり暗くなり、キラキラと輝くイルミネーションの中を歩いていた。
「恵ね、今日月慧くんと一緒で良かった☆」
「うん!僕もね、恵ちゃんと一緒でスゴく楽しかっよ」
お互いに顔を見合わせ、幸せそうに微笑む。
「でも、ゴメンね。せっかく恵ちゃんケーキ楽しみにしてたのに…」
「ううん!ケーキはまた買いにくればいいよ」
「…あ!それなら今度一緒にケーキ作ろうか!僕お母さんに作り方教えて貰ったから」
「本当に☆!?恵ケーキ作るの初めて!」
「じゃあ、約束しよう!」
「うん//!!」
毎年見慣れているはずイルミネーションがいつもより美しく見えるのも
笑顔になれるのも
心がこんなにも暖かいのも
それはきっと、君がとなりにいてくれるから……
君のとなりが、一番の幸せの場所
【END】