NOVEL 第一部[完結]


□我が信念を貫かん
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***



『強い心を持つ者こそ、真に強い者だ』








なら強い心とは何だ?




私はそれを持っているのか?






しかしその疑問に答えてくれる者は誰もいない。








自分を一番知っているのは……



やはり自分だから……。



***




「わしはそなたが参った時程嬉しい事はないぞ」


「勿体ないお言葉です」








他でもない殿からのその言葉が何よりも嬉しかった。




武芸を学ぶ為に旅立ち、幾人もの将軍と出会った。



その中で私が仕えたいと心から思ったのはこのお方一人。




私は殿の為ならば命はいつでも投げ出せる覚悟はしていた。











「……ッ!!どけ!我が槍の貫かれたくなければ道を開けよ!!」




次第に殿の人徳に惹かれし者たちが集まり、大軍勢となっていった。




しかしそれを気に食わない輩もいる。


その者たちにより私たちは住むべき居場所を奪われ、平穏をも奪われた。





まさにその最中、殿の御子が敵中に取り残されてしまった。







敵陣であろうが関係ない。
私は御子を救出すべく馬を走らせた。










殿の御子を救い、英雄になろうなんて考えた訳ではない。

ただ殿をご安心させたかった。





だが私を迎えてくださった殿の表情は苛立ちを見せていた。






「……ただいま戻りました。御子はここに……」

「我が息子なんかどうだってよい!!」





あの穏やかな殿のこんなにも苦痛の姿は初めて見た。
その時の殿が……今でも目に焼き付いて残っている。




「危うくわしはそなたという大切な者を失う所だったではないか!!……無事で、よかった……」


「……殿」









彼は本当に私を頼りとし、認めてくださったお方だった。







だから私は……あなたの為に闘いましょう。










私を強き者と認めて下さったあなたの為に闘おう。



***

 
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