NOVEL 第一部[完結]
□我が信念を貫かん
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『強い心を持つ者こそ、真に強い者だ』
なら強い心とは何だ?
私はそれを持っているのか?
しかしその疑問に答えてくれる者は誰もいない。
自分を一番知っているのは……
やはり自分だから……。
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「わしはそなたが参った時程嬉しい事はないぞ」
「勿体ないお言葉です」
他でもない殿からのその言葉が何よりも嬉しかった。
武芸を学ぶ為に旅立ち、幾人もの将軍と出会った。
その中で私が仕えたいと心から思ったのはこのお方一人。
私は殿の為ならば命はいつでも投げ出せる覚悟はしていた。
「……ッ!!どけ!我が槍の貫かれたくなければ道を開けよ!!」
次第に殿の人徳に惹かれし者たちが集まり、大軍勢となっていった。
しかしそれを気に食わない輩もいる。
その者たちにより私たちは住むべき居場所を奪われ、平穏をも奪われた。
まさにその最中、殿の御子が敵中に取り残されてしまった。
敵陣であろうが関係ない。
私は御子を救出すべく馬を走らせた。
殿の御子を救い、英雄になろうなんて考えた訳ではない。
ただ殿をご安心させたかった。
だが私を迎えてくださった殿の表情は苛立ちを見せていた。
「……ただいま戻りました。御子はここに……」
「我が息子なんかどうだってよい!!」
あの穏やかな殿のこんなにも苦痛の姿は初めて見た。
その時の殿が……今でも目に焼き付いて残っている。
「危うくわしはそなたという大切な者を失う所だったではないか!!……無事で、よかった……」
「……殿」
彼は本当に私を頼りとし、認めてくださったお方だった。
だから私は……あなたの為に闘いましょう。
私を強き者と認めて下さったあなたの為に闘おう。
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