NOVEL 第一部[完結]
□明日への架け橋
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『思い通りの人生、過ごせたか』
豪雨と暴風に混ざって投げ掛けられた言葉。
ああ、なんだって?
人生過ごせたか?
なんだよ、俺の人生まだこれからだぜ?
勝手に決めんなよな……。
身体は敵から負った傷と激しい雨により、血まみれの泥まみれだった。
雨の冷たさに体温を奪われ、もう何も言い返す気力も残ってなかった。
……ちくしょう……
せめて…せめて親父の仇だけでも討ちたかった。
『頼りの仲間も一族ももういない、父親の後を追わせてやろう』
いくら個々の武に自信があったとしても、所詮は一人の人間でしかない。
独りで強大な一軍に乗り込んだのが仇となったか……。
俺の人生って……何だったんだ?
平穏な暮らしを奪われ…
土地を奪われ…
家族も奪われ…
そして俺自身も奪われる…
だが俺が逝ったところで哀しむヤツはいない。
フッ……待たせたな皆。
俺も今そっちに行く……
『!!』
何だ?
俺に突き刺さるハズだった刃が一本の槍に弾かれた……。
『……チッ、……か……迎え撃つ用意をしろ!!』
俺は……助かった……のか?
***
「お!ようやくお目覚めですねぇ?」
目を開けると銀髪の男が俺に気付いてやってきた。
「あ!まだ起きちゃダメですよ。キミだいぶ重傷ですから」
確かに身体が痛くて動かせない。
この痛みは……まだ生きているという証拠。
「……俺は?」
何故助かった?
それが一番の疑問。
するとその人物は俺の問いに答えるよう、一人の男を手招いた。
「彼がキミを助け出したんですよ〜」
誠実そうに見える、不思議な感じで……
歳は俺とそう変わらないくらいの若い、整った顔立ちの男だ。
「単身あの大軍勢に突撃するとは……無謀にも程があるな」
「なっ…」
出て来ていきなり説教だとォ?
なんだコイツは……。
だがお蔭で新しい俺の居場所が出来た。
「…甘い!」
「ぐわぁッ!?」
槍の腕は自信があったんだけどな……俺よりヤツの方が一枚上手だったか……。
「いやぁ〜朝からゴクローサマです♪」
「軍師殿」
あの銀髪の男はこの軍最高の軍師だとか。
言っちゃ悪いケドとてもそんな偉い人物には見えんな。
「程々にしておきましょうねぇ、彼はまだケガが治ったばかりなんですから」
「分かっていますよ」
居場所……何よりも求めていたモノかもな。
これからが俺の人生だ。
悪いな親父、皆……そっちに行くのはまだ当分先になりそうだぜ。
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