NOVEL 第一部[完結]


□明日への架け橋
1ページ/2ページ



***



『思い通りの人生、過ごせたか』





豪雨と暴風に混ざって投げ掛けられた言葉。





ああ、なんだって?

人生過ごせたか?




なんだよ、俺の人生まだこれからだぜ?

勝手に決めんなよな……。






身体は敵から負った傷と激しい雨により、血まみれの泥まみれだった。



雨の冷たさに体温を奪われ、もう何も言い返す気力も残ってなかった。










……ちくしょう……










せめて…せめて親父の仇だけでも討ちたかった。









『頼りの仲間も一族ももういない、父親の後を追わせてやろう』






いくら個々の武に自信があったとしても、所詮は一人の人間でしかない。

独りで強大な一軍に乗り込んだのが仇となったか……。





俺の人生って……何だったんだ?


平穏な暮らしを奪われ…
土地を奪われ…
家族も奪われ…





そして俺自身も奪われる…









だが俺が逝ったところで哀しむヤツはいない。










フッ……待たせたな皆。




俺も今そっちに行く……











『!!』










何だ?

俺に突き刺さるハズだった刃が一本の槍に弾かれた……。











『……チッ、……か……迎え撃つ用意をしろ!!』












俺は……助かった……のか?








***

「お!ようやくお目覚めですねぇ?」


目を開けると銀髪の男が俺に気付いてやってきた。


「あ!まだ起きちゃダメですよ。キミだいぶ重傷ですから」



確かに身体が痛くて動かせない。

この痛みは……まだ生きているという証拠。





「……俺は?」


何故助かった?
それが一番の疑問。

するとその人物は俺の問いに答えるよう、一人の男を手招いた。




「彼がキミを助け出したんですよ〜」





誠実そうに見える、不思議な感じで……
歳は俺とそう変わらないくらいの若い、整った顔立ちの男だ。







「単身あの大軍勢に突撃するとは……無謀にも程があるな」


「なっ…」


出て来ていきなり説教だとォ?
なんだコイツは……。








だがお蔭で新しい俺の居場所が出来た。







「…甘い!」


「ぐわぁッ!?」



槍の腕は自信があったんだけどな……俺よりヤツの方が一枚上手だったか……。



「いやぁ〜朝からゴクローサマです♪」

「軍師殿」




あの銀髪の男はこの軍最高の軍師だとか。



言っちゃ悪いケドとてもそんな偉い人物には見えんな。




「程々にしておきましょうねぇ、彼はまだケガが治ったばかりなんですから」


「分かっていますよ」








居場所……何よりも求めていたモノかもな。

これからが俺の人生だ。









悪いな親父、皆……そっちに行くのはまだ当分先になりそうだぜ。





***
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ