NOVEL 第一部[完結]


□時が過ぎても
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【5月23日水曜日】




陽司、そして雪夜が前世の記憶を取り戻した翌日だった。









【流星高校・HR開始前】

「空ー!!」



空が教室へ現れたと同時に陽司が彼の名を呼び、走り込んで来た。


「……何?」

まだ空は起きて間もないようだ。ちなみに彼は朝が苦手らしい。


「オレもついに覚醒したんだぜ!」


「…それで?」


「…それで?じゃねーだろ!!」


興奮する陽司をよそに空は欠伸をかく。



「…って風に、さっきから陽司ずっとこの調子なの」

「へぇ」


天と星明は何回も聞かされ続けたらしい。



「…ところで陽司、そろそろ前世がどなたなのかを教えてくれない?」


三国志マニアの星明は気になって仕方が無い様子。


「知りたい?」

「是非!!」



「おはよう」

と、そこへ雪夜が登場。


「お、雪夜!オレ昨日ついに覚醒したんだぜ!」


それは分かったから早く教えてと言わんばかりに星明は陽司の手を引っ張る。



「へぇそうなんだ。実は僕もなんだ」

「へぇー……って、お前もかよ!?」



自分が一番乗りだと思い込んでいたところに思わぬ伏兵現る(笑)!




「…なんでそうぽんぽん覚醒出来たんだ?氷斗にでも会ったか?」

「氷斗ってヤツじゃなくて一緒に居たメッシュ野郎に会ったんだよ」

「ああ〜亮希か」

「そう、そいつ!」



それでそいつがいきなりケンカ吹っ掛けてきただの、昨日の出来事を陽司は語り始めた。






「……とまあ、最終的にその氷斗が出て来て谷沢を連れて帰ったんだけどよ」



もうちょっとだったのになぁ〜と小さくこぼす。




「なら陽司、氷斗に感謝するんだな」


「へ?」



空に名前で呼ばれたことも驚いたが、その答えの意味が気になった。



「亮希は一度暴れ出すと手がつけられなくなるんだ。まだお前だけの力で勝てる程甘くはない」

「何ィ!?」

「陽司落ち着いて!」




ただ覚醒しただけの力では足りないということ。
この先そんな相手と戦うことが出来るのか……天に不安が残る。




「どうしたの天?顔色悪いけど大丈夫?」

「あ、うん大丈夫よ。……それより雪夜、翔は?」



いつも優しい言葉を掛けてくれる雪夜。
そんな彼の相棒・翔の姿がまだ見えない。



「ああ翔ね。ほら、今日の一限数学だろ?きっと宿題忘れて遅刻じゃないかな」

「あ!ヤベェ宿題の存在忘れてた!!星明ぃーー」

「ダメです!」


「そういえば月慧もまだ来てないね」

「どっかで寝てんじゃね?」

「それは空でしょ」




宿題忘れたからってサボる翔ではないと思ったが…考えてももう遅い。
HR開始のチャイムと共に2−A担任の高岬が登場する。




「ほぅ〜ら席着けぇ〜出席取るぞ〜」



「よし!セーフ!」


挨拶前に滑り込みしたのは月慧だった。



「あ、せんせーおはようございまーす♪あはは…」

「はい、流霜遅刻」

「エェーなんでぇ!?」

「もうチャイムは鳴ってんだ、とっとと席に着く!」

「…はぁ〜い」




週に一回はあるかないかの月慧の遅刻。
みんながそれに大笑いする。



ふと天が隣へ視線を向けると、あの空が笑っていた(軽くだけど)。



「(空でもこういうのは笑うんだ)」



少し温かい気持ちになった。








高岬先生が出席確認を終える頃になっても翔は来なかった。



 
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