NOVEL 第一部[完結]
□交錯する雷と氷
1ページ/8ページ
【5月26日土曜日】
天の誕生日から翌日の事だった。
「みんな、昨日はありがとう。……ゴメンね」
朝食を取り終えた直後、天の口から聞かされた言葉。
「天が謝る必要はねぇよ。……寧ろおまえを守れなかったオレの方こそゴメン」
落ち込むことの滅多にない陽司さえこの調子だ。
「これから氷斗たちは本気で掛かってくるだろうね。…となると」
腕を組む雪夜の視線は月慧へ向けられた。
「早く月慧にも覚醒してもらわないと」
「ボク?うん、ボクも変身したいなぁー♪」
至ってマイペースな月慧に翔は溜息をつく。
「呑気だな……」
「ここで問題なのですが」
星明が軽く机を叩いた。
それに驚いた空が顔を上げた。
「何?」
眠たそうな空を真っ直ぐ見つめ
「思ったんですけど、まだ空君は一度も覚醒したことがないんですよね?」
「ああ…」
朝に弱い空。
いい加減起きろと陽司が頭を揺らした。
「空君が戦いに参加して頂けたら、陽司たちも苦戦しなかったのでは…と思ったんです」
そのコトか…と空は肩を落とした。
「…星明には俺がそんなに強く見えるのか?」
「僕たちに前世覚醒のきっかけを与えてくれたのは空君ですよ」
「……」
星明の言い返しに押し黙ってしまう空。
見兼ねた天が、
「ねえ…何か空には覚醒出来ない訳があるの?」
陽司、雪夜、翔、星明も前世を思い出した瞬間に覚醒することが出来た。
それなら空も出来ないということは無いと思う。
やれやれと言うように、空は目を伏せた。
「……前世覚醒《リバイバルソウル》とは、自分の前世と同調《シンクロ》することで発動するんだ。…だが俺には出来ない。俺は……前世の自分が嫌いなんだ」
空の口から出た言葉は意外なものだった。
「前世が…嫌い?」
「…大切なモノを何ひとつ守れない弱い男だった。だから俺は……俺はアイツとは違う、違うんだ!」
静かに怒りを表す空の青い瞳が、何よりもそれを物語っていた。
「空……」
気になる
空のコトがもっと知りたい
でも前世で何があったのか問いただしたところで彼がそう簡単に話してくれるとは思わない。
逆に彼の心を傷付けてしまうかもしれないという不安もあった。
…わたしが前世の記憶を取り戻せなかったから……
『僕じゃ…ダメなんだ…』
氷斗の深く哀しい色をした瞳が浮き上がる。
ああ…わたしは……
小さい頃にはもっと仲がよかった氷斗。
綺麗な顔をしたお人形の女の子みたいだった、恥ずかしがり屋で泣き虫だった氷斗。
そんな氷斗が……
誰ともケンカすることのなかった大人しい彼が…
友達をケガさせた。
そんな彼の心を……
わたしはキズつけた…
わたしと氷斗と、空と……
一体何があったのか…
記憶を思い出せない不安と恐怖が一気に込み上げる。
震える身体を庇う様に、自身を抱きしめた。