NOVEL 第一部[完結]
□我が信念を貫かん
2ページ/2ページ
***
遠い昔、誰かの為に命を賭けていた。
だけどその人を守ることが出来なかった、自分がいた。
だから僕はその人が残したモノを守って闘った。
それは遠い昔。
「どうしたんだよ雪夜。最近いっつもぼーっとしてんなぁ」
「ああ、翔。何か用?」
僕は流星高校二年生、譜堂雪夜。
こうして学校に通い、友達と楽しい毎日を過ごしている。
何もない退屈な日々は突然現れた彼によって変わっていった。
転校生・瀬咲 空
彼が来てからは身の回りに不思議なことが起き始めた。
それが誰かの為に戦う自分。
「なあ翔、最近変な夢を見るんだ」
そういうと、翔は「お前もか?」という顔で僕を見た。
僕たちのみる夢……それと転校生が関係あるのか?
もっと驚いたのは天や陽司、星明も似たような夢を見たんだとか……。
「にしても不思議だよなあ〜。みんな瀬咲が来てからなんてさ」
「全くだぜ。まあいい退屈凌ぎにはなるし、別に俺はどうだっていいケドよ」
陽司も翔も気にしないという風だし、月慧は面白がっている。
「星明はこのコトに関してどう思う?」
「うん……何か引っかかるモノを感じるよ。……でもだからって瀬咲君が関係しているかなんて分からないし…」
「そうか…」
こういう行動はまず僕が取るべきだろう。
どうも人任せというのは性に合わなくてね。
それ以前に無口の彼が話してくれるかが問題だけど。
翌日、学校に向かう道で瀬咲君とばったり出くわした。
「おはよう」
「……おはよ」
今日はいつも一緒の翔が「寝坊したぁー!!」と電話が来たから先に行ったんだけど……まさかこんなところで彼と出会うとは。
「君に聞きたいコトがあるんだけど……いいかな?」
話の内容にもよると言うような視線だけがこちらに向けられる。
「三国志、知ってる?」
すると彼は興味があるのか、どうやら話は聞いてくれそうだ。
「実は君が転校してきてから身の回りで不思議なコトが起きてさ」
「…不思議なコト?どんな」
赤信号により足が止まる。
「よく夢を見るんだ。僕だけじゃない、周りの皆もだ。…その夢の内容は三国志の物語に酷似してるんだ」
彼は何も言わずこちらを見る。
「僕の場合は……敵の大軍勢から主の息子を助け出す話。……それは蜀の名将・趙雲子龍が君主・劉備玄徳の子を助け出した話と似ている……ってね」
こんな話をして彼が信じるのもどうか分からないけど……。
「……お前も前世が……」
信号が青に変わる。
「……なんでもない」
と彼は言葉を止め、足を進めた。
……やはり彼は何か知っている。
まだまだ楽しめそうだ。
本当に僕らと“三国志”が関係しているのか……それは話が進んでからのお楽しみ。
***