「ああん? 神だぁ? あのダメツナがか?」
「小僧さぁ、ツナの正体知ってるだろ? なんで隠すんだよ」
山本とリボーンがオレの部屋で会話になってない会話をしている。
しかも内容が意味不明なのだ。
神? 意味が分からない。山本は宗教に興味があるようなヤツじゃない。でも、言ってることは宗教の人みたいに神について熱く語っている。
「山本、お前はツナのことを買いかぶりすぎだ。ツナが神なわけねぇだろ? アイツが神だったら世界はとっくの昔に全滅だ」
うんうんと部屋の外で頷く。そのとおりだよ、リボーン。神なわけないじゃん、オレが。
しかし、山本はその言葉に怒った。
「まだ隠すのか? ツナの実力にいち早く気付いたのは小僧だろ?」
「……山本。てめぇ、ツナに何かしたんじゃねぇよな?」
ギクリとする。脳裏にあの夢がよぎったからだ。
“ツナヨシ”
自分の意思で山本の口と声帯を操ったけど、よくよく考えてみればアレはかなりすごいことだったと思う。
ツナ以外の呼び方はされたことがなかったから、鳥肌が立った。自分の意思で山本を動かせたのにも驚いた。山本からの視線でみた自分は、小柄だった。
「ツナに……」
山本の声でハッとする。そうだ、こんなこと考えてる場合じゃなかった。
「ツナには、黙っていてもらいてぇんだけど」
「ああっ? お前、マジでツナに何かしたのか?」
夢。夢のことかな。
自然と手が震える。歯がカチカチと鳴る。
「オレ、ツナに現状知ってもらいたくてさ。オレを操ってもらった」
表情が凍る。
「……山本、お前、ツナに危害を与えたのか?」
殺気を感じる。危ないと直感が察知し、急いで部屋に飛込む。そのまま山本の背中にダイブした。
「……いって」
山本の上からどきながら、チラリとリボーンを見ると、ギラギラと目を輝かせていた。
「ダメツナ。お前、なんで黙ってた。しかもオレに悟らせねぇように巧妙に隠しやがって」
「隠してないよ! ていうか、寧ろバレてんのかと思ってたよ……」
リボーンがオレの心を読めなかった理由が分からず疑問が浮かび上がる。そのとき、山本が薄く唇を開く。
「それ、骸の仕業なのな。俺が頼んだんだけどな」
六道骸。六道輪廻を経験したナッポーヘアーの美丈夫。リボーンが大きく目を見開く。
「骸? まさかアイツ、お前の話聞いて納得したんじゃねぇよな?」
静寂が訪れる。それが肯定を意味すると理解し、リボーンもオレも唖然とした。
「山本、それホント? 神がなんとかとか、骸が信じるわけないじゃん……!」
目に涙が溜る。なんとか堪えようとするが、無理だった。次から次に溢れ落ちる涙を見たくなくて、両手で顔を覆う。
そこで気付いた。そういえば、こういう光景を客観的に見たことがあるな……と。
「ツナは嫌だったのな、俺がこんなこと考えて接してたのが。だったら止めるから……今まで通りで居ようぜ」
山本の悲しそうな声にオレは何も答えられなかった。