<争いの理由>







 眠りから覚め、上半身だけ起こして、窓から外を眺める。四階からの眺めは最高だ。特に夜はいい。
 朝と夜の時間が逆転している自分の生活に嫌気が差しているが、この時間だけは至福の時間である。

「……今日もか」

 壁に張ってあるカレンダーには青い文字でボンゴレと書かれている。

「疲れた」

 最近、深い眠りについていない。ボンゴレ殲滅のことが頭を駆け巡り、緊張感を持ちながら寝る。そのため、浅い眠りになり、夢ばかりを見る。

 ドン・ボンゴレが「太陽食べたい」と言い出したり、駄犬が「バナナ育てたい」とか、鳥が「坊主にしたい」とか。意味の分からないことばかり口走る。自分はソレに対して、同感して、手助けする。もう自分はボンゴレを裏切ったというのに、なんて嫌な夢なんだと思う。

「いたい」

 眼が痛い。昨日、スキルを使いすぎた。
 毎日の戦いに、もう飽きた。疲れた、痛い、眠い。

 ああ、眠ろう。どっぷりと暮れる太陽のように深い眠りにつこう。
 真っ白な枕を手元まで引き寄せ、抱き寄せる。

「……ボンゴレ」

 貴方は、今日はどんな夢をみますか。

 僕がこんにゃくを切る夢ですか?
 僕が歯医者になる夢ですか?
 僕が妊娠する夢ですか?

 きっと、ありえない夢を見ているのでしょうね。

 毎日の戦いに終止符を、僕は打てない。
 
 ねぇ、早く戦いを終わらせて僕を安心させてください。貴方なんかと、戦いたくないんだ。

 僕は、平凡になりたいんですよ。

「……綱吉君、きみに会いたい」

 会って、普通に話して、僕がボケて、君がツッコんで。馬鹿みたいに大騒ぎして、君のお母さんの手料理を食べて。一緒に風呂入って、一緒の部屋で寝て。たまに僕が猥談をして、君がそれを嫌がって。
 それで、二人で深い眠りにつきたい。

「……前に、戻りたい」

 枕を強く抱きしめ、呟く。

「好きな人と、戦いたくないんだ、僕は」

 傷つけあうことが、どれほど怖いか。苦しいか。醜いか。悲しいか。君も、分かっているだろうに。

 どうして、僕達は戦わなくてはいけない。

「……つなよし、くん」
 
 おしえて、くださいよ。

 
 どうして僕達が争わなければならないのかを。





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