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 あの事件以来も、山本とまだ仲良くし続けている。でも、以前に比べるとかなりぎこちない関係になった。

 山本はオレから逃げるように野球にのめり込むようになった。獄寺くんも何かを察知したのか、なるべく山本とのことを聞いて来ない。

 リボーンは山本と一緒にいるオレをみて呆れている。

 
 オレは、どうすればいいんだろう。なんで、こんなに過ごしにくい環境のなかで、笑ってるんだろ。


*****

 そんななか、夜中に骸が部屋を訪ねてきた。玄関から入ってくればいいものの

「夜中ですからね。迷惑をかけるでしょう?」

 ということで二階の窓から入ってきた。リボーンはいない。ビアンキとどこかに出掛けると言っていたから、しばらくは帰ってこないだろう。

 骸にお茶ひとつ出せずにウロウロと目を泳がせているオレに骸は微笑んできた。

「随分、山本武のことについて悩んでいるようですね」

 こくりと頷き、口を開く。

「でも、骸も山本とグルだったんでしょ?」

「ええ、豪く真剣な表情で学校に訪ねて来たんですよ」

「学校って……黒曜中に?」

 小さく頷き、骸は眉間を寄せた。

「彼、何かあったのですか?」

 心当たりがない。なぜ、あんな意味のわからないことを言うようになったのかまったく分からないオレは首を振った。

 骸は「そうですか」と呟くとオッドアイの瞳を瞼で隠した。何か考えているみたいだ。

「山本武、沢田綱吉……、神」

 共通点は、一つ。オレと山本が親友というだけだ。神とオレの共通点は一つもない。

「大空、か」

 骸がピタリと固まる。大空、と言った瞬間に何か思い当たる節があったのだろうか。

「いや、沢田綱吉だ」

 骸さんはブツブツとしばらく言っていたが、やがて瞼を持ち上げて言った。

「彼、君のことが好きなんですよ」



「はいッ?!」

「だから、山本武は君のことが好きなんですよ」

「ちょっ、意味がわからなっ……」

「やっぱり、骸でもそう思うか」

 第三者の声がいきなり入ってきてオレはベットの上で飛び上がった。リボーンだ。

「ええ。だって、最近山本武は初恋をしたと言っていました」

「やっぱりな」

 は、初恋?!しかも、なんで骸に相談なんかしてるんだよ、山本!

 心のなかでツッコミながら、隣に座っている骸を見上げる。

「ツナじゃねぇかと薄々思っていたが、まさか本当だったとはな……」

「ちょっと待って!まだ山本の好きなひとがオレだって決まったわけじゃ……」

「いいえ、きっと君が好きなんですよ、彼は」

 骸が断言する。リボーンも大きく頷いた。

「山本武は、君のことを一番信頼している。恐らく、実の親よりもです。その彼が君に相談しなかったのは、何故でしょうか?」

 首を振る。

「君に何か言えない事情があった……。違います?」

「そ、そんな事情ったって……。獄寺くんが好きとか、京子ちゃんが好きとか。そうだよ、京子ちゃんだよ!」

 そうだそうだと一人頷いているとリボーンは首を振った。

「山本は、京子よりも獄寺を選ぶと思うから、そりゃねぇぞ」

「ちょっ、何言って……」

 何気に山本がホモだという発言だ。

「彼は男色家っぽいですからね」

「ちょぉ、骸までぇ?!」

 
「ツナ。お前に選択肢は迫られている」

 リボーンが今までに聞いたことがないぐらい真剣な声と瞳でオレを責める。

「山本は、お前にゾッコンだ」

「ちょっ、ゾッコンとか言うなよ!」

「本当のことなんだから、しょうがないでしょう?」

 骸がオレの肩を叩いて、言った。

「君次第で、ボンゴレの運命も決まります」

 守護者。頭に思い浮かんだ単語に青ざめる。
 
 そうだ、山本は雨の守護者なんだ。

「……いや、別に山本はボンゴレなんかに来なくていいんだ。だって、もし山本になんかあったら」

「馬鹿ですか、君は。山本武は、君がいない将来の恐怖を知っている。何がなんでも、君の事を守ろうと思っていますよ、彼は」

 そうだった。山本は知っているんだ。マフィアのことを……。

「僕はもう帰ります」

「……、あ、ちょっと待って。そういえば、骸って今日何しに来たの?」

「山本武がどうしているか気になったので」

「あ、そっか」

 そう頷いた、オレは骸を見上げる。

「えっと、ありがとう」

 骸はオレを見て、小さく笑った。






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