“今日、暇かな?”
携帯に浮かびあがる文を見て、山本は僅かに眉を寄せる。差出人は【ツナ】と表示されている。
山本はゆっくりとボタンを押しながら本文を完成させ、返信ボタンを押した。
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「ごめんね、山本。部活終わった後で疲れてるだろうけど……」
「いや、別にいいぜ。ツナから話があるって珍しいからな」
ニカッと山本は笑うと、見慣れた綱吉の部屋のベットに座る。
綱吉も山本の隣に座った。
「で? 話ってなんだ?」
今までずっと綱吉を避け続けていた山本は、なるべく話をすぐに終わらせ、すぐに家を出たかった。
綱吉とは顔を合わせ辛いし、自分の考えをすべて知られているのだ。
綱吉は急かす山本にゆっくりと向きあって口を開いた。
「山本、好きな人できたんだって?」
「……骸? 雲雀? ディーノさん? 小僧?」
「は?」
突如挙げられた名前に綱吉は困惑する。山本は眉間を寄せながら言った。
「誰に聞いた?」
「む、骸とリボーンから。というか、山本。ディーノさんとか雲雀さんにも言ってたの?」
背中に汗が流れる。随分と冷えた汗だ。これを冷や汗というのか。綱吉はひとりでそんなことを考えながら山本を見上げる。
「好きな人は言ってねぇけどな」
「ふ、ふぅん」
リボーンと骸との会話を思い出して、首を振る。まさかそんなことはない。
「あのさ、嫌だったらいいんだけどさ。好きな人教えてくれる?」
山本の顔が僅かに強張る。綱吉も思わず拳を強く握る。
「……どうしても、知りてぇのなツナは」
山本が立ち上がる。そのまま扉にいき、電気の繋がるボタンを押した。当然電気は消える。
「え、なに、山本。なんで電気消すの?」
「ツナ」
月の光が差し込む。月光だけが頼りの部屋のなかで、山本は静かに笑っていた。
「俺な」
突然頬に当てられたごつごつとした冷たい手に驚いて綱吉は後ずさりをした。しかし、すぐに壁に背中がつく。シーツを掴み、綱吉は山本を見上げる。
「俺、ツナが好きみてぇなんだ」
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