「……うん」
頬に当てられていた手が首に触れる。
「へぇ、ツナってやっぱすげぇのな。全然驚きやしねぇ」
「お、驚いてるよ」
長い十本の指が首に緩く掴む。親指は喉仏の上に当てられ、他の指は全部首の後ろで固定されている。
――殺される。
「ふぅん」
首がだんだん両手によって絞まる。
「や、やまもと」
「ツナの首、細ぇ」
加減をしていない両手によって、呼吸が困難になっていく。
「……っぐ」
両手で山本を力いっぱい押すが叶わない。両足をばたつかせるが、効いていない。
「人間って、すぐに死ぬ。呆気ねぇよな。だけど……」
山本が手を緩めたおかげで、呼吸が出来た。しかし、求めていた酸素が思ったよりも多くて、咳き込んだ。
「ツナは神だから、そんな簡単に死なねぇよな」
「死ん、じゃうよ!」
親友に殺されると思った。他の感情はなく、混じりけのない殺意を感じた。リボーンが山本に向けた殺意には、憎しみや怒りが混じっていたというのに。
初めて、人を怖いと思った。
「死ぬ? そんなわけねぇじゃん。お前は神なんだし、第一、俺はお前を本気で殺そうって思ってないのな」
ヘラッと笑われる。
「笑い事じゃないよ!」
あの殺意は、間違いなく山本から感じた。
「本当に、殺されるかと思った……」
親友なのに、可笑しい。
「オレのことが好きなら、もっと大事にしたいって思うはずでしょ?!」
「……ツナは、本気で好きになった人がいないから分かんねぇんだよ」
突如、山本が今まで聞いたことがないくらい低い声を出した。山本の両手はまた、オレの首を乱暴に掴む。
「ムカつく。ツナばっか、そんな余裕で。俺ばっか、焦ってる」
焦って、もがいて、自分が何をしているのかが、分からない。
「俺ばっか、苦しんでる」
神に助けを求めた手は空を掴んだ。一生離さないと、誓った。
「ツナだけは、俺を助けてくれると思ったのに」
神。
「なんで、助けてくんねぇの?」
――神は、いなかったのか?
「……やま、もと」
頸動脈を親指で探られながら、オレは泣いてた。嗚咽も上げられない。オレは、山本の期待を裏切った。
「ごめん、ごめん……」
ごめんね、山本。
.