戦国系
□月見酒
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空はもう暗く月がきれいに見える夜。
中国を治める毛利家の策略家、元就は片手に酒を持ち
一人月見酒を楽しんでいた。
遺言を残し早数週間。
ただただ本の山に囲まれた生活を送っていたが
時には息抜きも必要だろうと、こうして夜風に吹かれながら思いにふけていたのだ。
「元就様ー、元就様ー」
遠くで○○の呼ぶ声が聞こえた。
声が少しずつ大きくはっきり聞こえてきて、障子を開けた。
「元就様―あら、ここにいらっしゃいましたか」
「○○、どうしたんだい?」
「いえ、用件というものはないのですが姿がお見えにならなかったので・・・
お酒を飲んでいらっしゃっいましたか」
手に持った酒を見て少し驚いた。
自分で進んで飲むことが少なかったから、物珍しそうに見ていた。
「○○も飲むかい?」
「いえ、私そんなに好きではないですし、すぐに酔ってしまうので」
「いいじゃないか、酔ったときは介添えするし、○○と飲みたいな」
にっこりと笑みを浮かべ一緒に飲もうと誘われる。
ここまでこたら断るのも気が引けるので、仕方なく覚悟を決める。
「す・・・少しだけなら」
元就に近付き、少し距離を置いて座る。
月に照らされ二人の静かな時間が始まる―
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