幸せは旅人
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『ため息をすると幸せが逃げる』


なんて、一体どこの誰が言ったんだ?でも確かに、逃げてしまう。いや、強制的に抜け出してしまうんだ。

だとしたら、その『幸せ』はどこへ行ってしまうんだろう。















































はぁ、とひとりの女性からため息が漏れた。隣に行た男性は苦笑しながら、ため息吐くと幸せ逃げんぞと語りかける。

だが、女性がため息を吐いた時点で、もう『幸せ』は抜けているのだからもう遅い。

抜け出した『幸せ』は、風に流され、呼吸に導かれ、男性に吸いとられていった。

それに気付かないふたり。

女性は何度もため息を吐き続ける。そして、それは全て男性に運ばれる。


ひとりの人に与えられている『幸せ』が100だとしたら、今の女性は90くらいで、男性は110…その差は20。

『幸せ』が移った。

ということは、ため息を吐いた人の分、近くにいる人はシアワセになれるのだ。

だが、男性がため息を吐けば、その『幸せ』は女性に吸いとられていく。

そして、ため息を吐く相手が違えば、一定量の『幸せ』は人から人へと旅をするのだろう。



だから、ため息を一度も吐かずに生を終えた人はいいとして、ため息を何度も吐いて亡くなってしまった人の分の『幸せ』はこの世にとどまる訳で、その分、昔の人よりは、現代人の方がシアワセなのかなぁ…とか。





















その男女のやり取りを見ていて、現実逃避をしていたりする。

























あぁ、今のこの不景気。



いつ首を切られるかもわからない。





























誰が、ため息を吐いて



































わたしにシアワセを下さい!













幸せは旅人 <完>

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