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□幸せは旅人
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『ため息をすると幸せが逃げる』
なんて、一体どこの誰が言ったんだ?でも確かに、逃げてしまう。いや、強制的に抜け出してしまうんだ。
だとしたら、その『幸せ』はどこへ行ってしまうんだろう。
はぁ、とひとりの女性からため息が漏れた。隣に行た男性は苦笑しながら、ため息吐くと幸せ逃げんぞと語りかける。
だが、女性がため息を吐いた時点で、もう『幸せ』は抜けているのだからもう遅い。
抜け出した『幸せ』は、風に流され、呼吸に導かれ、男性に吸いとられていった。
それに気付かないふたり。
女性は何度もため息を吐き続ける。そして、それは全て男性に運ばれる。
ひとりの人に与えられている『幸せ』が100だとしたら、今の女性は90くらいで、男性は110…その差は20。
『幸せ』が移った。
ということは、ため息を吐いた人の分、近くにいる人はシアワセになれるのだ。
だが、男性がため息を吐けば、その『幸せ』は女性に吸いとられていく。
そして、ため息を吐く相手が違えば、一定量の『幸せ』は人から人へと旅をするのだろう。
だから、ため息を一度も吐かずに生を終えた人はいいとして、ため息を何度も吐いて亡くなってしまった人の分の『幸せ』はこの世にとどまる訳で、その分、昔の人よりは、現代人の方がシアワセなのかなぁ…とか。
その男女のやり取りを見ていて、現実逃避をしていたりする。
あぁ、今のこの不景気。
いつ首を切られるかもわからない。
誰が、ため息を吐いて
わたしにシアワセを下さい!
幸せは旅人 <完>