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□あり得ないくらい
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「俺、風邪引いた事ないんだ!」
ひとりの男の子がそう言っていた。その男の子の名前は悠太。周りの子が、悠太に馬鹿は風邪引かないもんねーとからかっていた。
私は思う。
鈍感なのかな?と。
あれから2ヶ月が経った。
席替えをしたから悠太の席は私の隣。でも、今日その悠太は顔色が悪く、でも微かに頬が赤い。
明らかに風邪、熱だろう。
「悠太風邪引いたんだね。学校休めば?」
言ったら悠太はこっちを見て、風邪なんて引いてないと言った。
でも、悠太の様子からして、今まで風邪引いたことがないことが自慢だったのに、風邪引いたと認めたくない…という訳ではなさそうだ。
もしかして…
「あんた風邪って何か知ってる?」
「お前!馬鹿にしてんのかよ」
どうやら知っているらしい。ちゃんと風邪はダルいとそのあと悠太が答えた。
私はさらに、ダルいって何?と問い掛けてみた。
そしたら…
「…アレだ、とにかくアレ!」
どうやら知らない様子。
(なるほどね…)
私は理解した。
悠太が風邪を引かない理由…。否、悠太は風邪を引くのだ。だが、馬鹿だからそれに気づかないだけ…
馬鹿は風邪引かない。
そんな謂れは嘘っぱち。なぜなら、風邪引いたのが馬鹿なら、風邪引いたことに気づかないだけ。
正真正銘の馬鹿。
…可哀想に。
馬鹿は風邪引かない、
真実はそうじゃない。
馬鹿は…
風邪に気づかないのだ。
あり得ないくらい <完>