彼女の笑顔

第1章 これが私だった
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無事に、2日目の学校が終わってくれた。なんか無駄に疲れた。

だが、私の苦労はまだ続く。

すっかり親同士の家庭内別居が定着した家で、弟はすっかり不良になっていた。
私と弟は3つ違いで、弟は中1だった。そう、まだ中1。それなのに弟は髪の毛を金に染め、飲酒をし、煙草を吸うという立派な法律&校則違反。
そりゃ飲酒くらいなら、缶チューハイの一本や二本。最近の若者なら当たり前だろう。
だが、問題は煙草。
1.匂う
2.煙が出る
3.体に悪い。吸った人はもちろん、周りにいる人にも。
聞いた話では、周りにいる人の方が、被害が大きいらしい。

まぁそんな弟でも、私にはなついてくれているので、まだ可愛いものだが。

というか、私も不登校の間に不良の友達が沢山出来て、悪だった為、逆らえないというのもあるだろうが。




「ただいま」

言って家に入るが、それに答えるものはいない。
唯一、反応してくれるのは5年前から共に過ごしている犬のポンタンだけ。
私になついているのか、私が帰ってくると玄関まで走って迎えに来てくれる。

その事に、私はポンタンの頭を撫で、ただいまと言う。

意外にさみしい子みたい。

 


リビングに着くと、弟が煙草を吸いながらテレビを見ていた。

「お前、家ん中で煙草吸うなっつっただろ」

学校での性格や口調が違うのも、私が身につけた技の一つ。こうすることで、相手になめられたりする事を防ぐ。

ちなみに、私の性格は上げれば上げるほど出てくる。

というか、人間三人くらいで一つの性格が生まれていく気がする。


私が声を掛けた事によって、弟はようやく私の帰宅に気づく。

弟は、灰皿に煙草の先を擦り付けると、「ごめん」と「お帰り」と言ってくれる。不良ながらに、育児放棄している親に代わって私が礼儀というものを教えているだけあって、礼儀はなっている。

お帰りと言われたので、二度目だが、ただいまという。


だが、私にはまた外へ行く理由がある。それはポンタンの散歩。
可哀想だが、朝は時間がないので、散歩は1日一回夕方の散歩のみだ。

私が、散歩用のリードを取り出すと、ポンタンは尻尾を千切れるんじゃないかと思うくらい振りながら、駆け寄ってくる。

可愛いだろ!ははは。

散歩コースは家の近くの公園まで行き、そこを一回りしたら家に引き返すというもの。
約30分間という短い時間だ。

 

この日、公園には久々に不良集団がたまっていた。
ぱっと見たところ、知っている人はいなかったので、私の友達ではないという事がわかる。

やっぱり、知り合いじゃないと不良というのは怖いものだ。

なるべく、その集団を避けて散歩していると、不良集団のひとりに「おい」と声を掛けられた。

なんか気に障るような行動しただろうか?
という心配は杞憂に終わった。

「美咲。久々じゃん」

近付いてきたのは、金髪に口ピアスの男。
ようやくその顔がはっきりと見えた。

「金谷!」

そう。彼の名前は金谷 亮治。
私の友達の不良だ。

私はすっかり失念していたが、視力が0.2くらいしかない。
あんな遠目で、友達かどうかの区別などできる訳がないのだ。



その金谷に続いて、不良たちがくる。みんな見知った顔だった。

「珍しくない?みんなで集まっちゃって。どうかした?」

「それよりお前、さっき俺らん事避けただろ」

確かに避けたが、人の質問にはちゃんと答えてほしい。

思わず、ちっと舌打ちした。金谷はそれに気付いて、は?と凄んでくる。

まぁ多少は怖いのだが、今はただうざいと思った。

「別にー」
 
素っ気なく答えてやると、金谷がキレて、私は肩を思いっきり押された。

まぁ不良なんて、気の短い奴らの集団だしね。

だけど、上下関係が凄い。

「なに女に手ェあげようとしてんだよ。カスか」

そう言ったのは、後ろの集団の中で、事の起こりを見ていた黒髪の男だった。
この中では、黒髪は非常に珍しい。
みんな、茶髪やら金髪やらに染めている。

私は学校があるから別として。でも中学校の時は染めていたので、頭髪については先生たちに文句を言われていた。

ちなみに、この集団の中にも中学生はいる。



金谷は、黒髪の男――森を見て、動きを止める。

「森さん…」

森がこの中では一番偉い。
金谷の動きが止まったから、私は森に駆け寄る。

「さすが森〜!久しぶり」

なぜ、私がそんな森に敬語も使わず、親しげなのかというと、
それは、私が、前いた集団で一番偉かったから。

なんで女なのに、私がリーダーと認めてもらえたかというと…

実は内緒なんだけど、ここの不良集団は何組もいて、その一番上が、本物のヤクザ。

んで、ちゃっかりおじさんたちの知り合いが多い私は、ヤクザにも知り合いがいたのよ。

それで、である。







 
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