愛造物語

第1章 ひとりの少女
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少女は再び、影の正体を見上げる。やはり、逆光で顔は見えない。
だが、声を掛けられた以上、無視するのは気が引ける。
だから―――

「な、に?…あたしに…言っているの?」

控えめに答える。
影は、少女に手を伸ばす。

「……っ!」

少女は殴られると思い、肩を震わせる。自分は何か悪いことをしたのだろうか?

だが、予想に反して、その手は少女の頭に優しく降ってきて、ポンポンと撫でた。
少女は疑問符を浮かべ、影を見る。
影は顔をうつむかせて少女を見た。

そのおかげで、少女は影の正体を見た。

それはまだ年若い青年だった。

「そう。君に言ってるんだよ」




君、名前は―――?










少女は戸惑った。

簡単に名前を教えていいものか…

だが、意外にも少女の口からはあっさりと自分の名前が出た。

















あたしは…、
















青年は微笑んだ。

そして、


「これから宜しくね」




と告げた。

















-ひとりの少女- <完>
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