僕らが居る場所

□2章
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薫風はそよ吹いて、芳春を漂わせている。

麟は思わずフェンスの前で立ち止まった。

この薫り、スキだな……そう思いながら目を瞑った。
「……それにしても、静かだな。んー、まだ始まってないとか…?」

グラウンドとの界になっているフェンスの入り口付近まで小走りで行き、中を覗いてみた。ちょうど、マウンドか見える。

人は居ない。
今頃部室だろうか?
部室はどこだろうか?

「そこ…邪魔。」



不意に後ろから指摘され、驚きながら振り返った。

「ぅああぁっっ!!す、すすすみませんっっ!!」

振り替えって肩越しに見えたのは自分より、遥かに背の高い男だった。


白いユニフォーム。
白いキャップ。
暗い臙脂色の長袖のアンダーシャツ。


「その格好…や、野球部?」
この顔は見覚えのある顔だと思ったら、クラスに居たような……気がするんだけど。

「あー。転校生か。」
やっぱり、そうだ。
「邪魔。」
「あっ、ゴメ…」
入り口の前で吊ったっていた麟は慌てて一歩左に避けた。

「あー。別に良いけどさ……此処狭いから…」

そう言って男は麟の横を抜けた。
後には気を付けろ…とでも言いたかったのだろう。
ソレにしても無愛想な男だった。


でも
「ところでさぁ。」

男は立ち止まって振り向いた。
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