僕らが居る場所

□3章
1ページ/8ページ


グランドに集まった部員達のまえに出された麟は注目の視線を浴びていた。
「……と、云うワケで、彼女も今日から野球部員だからな」
「よ、宜しくお願いします」
麟は笑顔で深々と会釈する。
「キャプテン、後は頼んだぞ!」
「はい」
監督は麟の紹介だけすると、早々とグラウンドから立ち去った。
部員にはそれぞれにメニューを与え、キャプテンと、麟は三塁側ベンチの中に入る。
メニューを与えられた部員達は、それぞれ何かを始めるのかと思いきや、女の部員が珍しいからかまだベンチの周りでうろついていた。

キャプテンは例のユニフォームを身に纏っている。どうやら練習用らしい。
「えっとぉ…俺、キャプテンの、上杉 健です…」
キャプテンと名乗る男は少し慌てて、まごついた様子だった。
キャプテンの鼻の頭には青い眼鏡が掛かっている。

綺麗な青だなぁ。

スキ…かな。

などと名前なんか聞かずに眼鏡に引かれてひまった麟…
そんな麟の横から上杉の顔を覗き込む人も居る。
「なんだよ、タッちゃん。照れてんの??」
ニヤニヤしながら主将を茶化そうとする男。
両頬に夏日班がある。
「ちっ違っっ!!ただ……女の子…だか…ら」
「はい!オンナです!」
ぎゅっと拳に思いを込めて力強く押した。
会話が噛み合ってない気がするが、もちろん麟は気付いていない。

「……ふぅん…野球、出来んの?」
今度は上杉健の後ろの方から、尋ねられる。…イヤだなぁ…と思いつつも
「はい。いちお……」
尋ねられた人の顔を見上げる。
………言葉が詰まって出てこなくなった。



キャプテンの上杉と同じ顔!

瞬間、息を呑み込んで、時が止まった。気がした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ