僕らが居る場所

□4章
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「うーん。とりあえず地図に添って行くかぁ」
麟は手の平サイズのメモに目を通す。中央の折れ目より少し下に“アシウラ”と書かれた四角い図が記されている。高校の事だ。その上には左右に岐れた細い道が書いてある。帰り道に合わせて、太い黒ペンで道を辿ってある。
その太いラインをたどって、麟は新しい家へとむかった。





つもりだった。
つもりだった。


「う…もう…自転車はパンクしてまうし、道には迷ってしまうわ‥‥もうっっ
母さん、歩いても20分程度やて言うてたやないかぁ」
もうキライっっ!とでも言いだしそうだ。

「もうっっ!キライっっ!!」
言った。



もう彼此1時間は経ったのではないだろうか。
いや、まだそれ程でもない。しかし、疲れた。
自転車を押しながら坂道をゆっくり登る。

「こ、此処だ!」

この通りの一番大きな家……ポストに書かれた名は“蒲公英”。
間違えは無い。
門の横にインターホンがある。鼓動は高まる一方だ。ゆっくりとした動作で白いボタンを押す。
……
押してからまだ間もない時に、待ってましたと言わんばかりに玄関が開いた。

外が暗かった所為か、中から漏れる光がやたらと明るく感じた。

「あら?もしかして……麟ちゃん?」
光の中から聞こえたのは温かみのある声だった。その声が自分の名を呼んでいるのだ。
「はい。えっと…ここ、蒲公英さんのお宅で合ってますよね!?」
「ええ。待ってたのよ、あんまり遅いんだから……」
「はは…スミマセン」
光の中の女性の声は穏やかだった。
どうやら、相手はこの家の家主のようだ。
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