flower garden
□flower garden ー序章ー
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エリンギウム―光をもとめる―
この世界は、闇に包まれている。
暗黒の雲に覆われた空。光がさすこともない。
分厚い雲が、少し明るく見えた時だけが夜明けの合図。
いつも、この空を見つめて思うことがある。
この空に、光が戻る時など来るのだろうか?
・・・俺たちの空・・・
・・・俺たちの太陽・・・
皆消えてしまった。
俺たち空賊は、これからどうして生きていけばいい?
なあ、誰か教えてくれよ。
だれか、おしえてくれよ。
胸につっかえた思いは皆同じだと分かっている。
分かってはいるが、誰かに、何かにぶつけたくて仕方がない。
だからだろうか。
世界の各地で耳にした噂が気になって仕方がない…でも、信じられない…
この噂が本当なら、この思いも…晴れる気がしたんだ。
俺の親父だって、同じ気持ちだったんだと思う。
ある日、親父は空飛ぶ船の舵をとり、ある国へと進路を変えた。
光のある国の噂を確かめたくて…
* * *
「ライラック―!見ろ!あれやないっ!?」
名前を呼ばれて、ふと前方を見つめる。
「あれが…噂の?」
「そうみたいやね。ちょっと風が和らいで来たね」
「ああ。それにしても…まだ残っていたなんて…」
信じられない光景…
でも、求めていたものでもあった。
闇の雲に覆われたはずの空…そのうちの一部には、闇がない。
そこの上空にだけ…まだ微かに光がさしていた。
ライラックは、足元を見下ろした。
大きな城が見える。この大陸に聳え立つネリネ城。
この地に来たのは今日が始めてだが、この大陸では一番大きな国だと聞いている。
噂には聞いてはいたが、思っていたよりもずっと明るい。
雲は有るもの、まだ他の国に比べれば、闇とは言えない。
懐かしい感覚が蘇ってくるようだ。
この国の王家による特殊な力とは聞いている。
だが、すぐにこの国も闇の餌食となり、獣も化け物と化していくのではないか・・・そんな不安が国の民も持っていないはずがない。
それでも、心地いい。
枯れそうな心に潤いでももたらすような感激だった。
確かめたい。
この地がどんなところなのか。
何か、手がかりがあるかもしれない。
俺たちの空を、取り戻すんだ。
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