flower garden

□flower garden ー序章ー
2ページ/39ページ

エリンギウム―光をもとめる―

この世界は、闇に包まれている。

暗黒の雲に覆われた空。光がさすこともない。
分厚い雲が、少し明るく見えた時だけが夜明けの合図。


いつも、この空を見つめて思うことがある。
この空に、光が戻る時など来るのだろうか?

・・・俺たちの空・・・
・・・俺たちの太陽・・・
皆消えてしまった。

俺たち空賊は、これからどうして生きていけばいい?

なあ、誰か教えてくれよ。
だれか、おしえてくれよ。




胸につっかえた思いは皆同じだと分かっている。
分かってはいるが、誰かに、何かにぶつけたくて仕方がない。

だからだろうか。
世界の各地で耳にした噂が気になって仕方がない…でも、信じられない…
この噂が本当なら、この思いも…晴れる気がしたんだ。






俺の親父だって、同じ気持ちだったんだと思う。
ある日、親父は空飛ぶ船の舵をとり、ある国へと進路を変えた。

光のある国の噂を確かめたくて…


* * *




「ライラック―!見ろ!あれやないっ!?」
名前を呼ばれて、ふと前方を見つめる。

「あれが…噂の?」
「そうみたいやね。ちょっと風が和らいで来たね」
「ああ。それにしても…まだ残っていたなんて…」

信じられない光景…
でも、求めていたものでもあった。

闇の雲に覆われたはずの空…そのうちの一部には、闇がない。

そこの上空にだけ…まだ微かに光がさしていた。






ライラックは、足元を見下ろした。
大きな城が見える。この大陸に聳え立つネリネ城。
この地に来たのは今日が始めてだが、この大陸では一番大きな国だと聞いている。

噂には聞いてはいたが、思っていたよりもずっと明るい。
雲は有るもの、まだ他の国に比べれば、闇とは言えない。
懐かしい感覚が蘇ってくるようだ。

この国の王家による特殊な力とは聞いている。

だが、すぐにこの国も闇の餌食となり、獣も化け物と化していくのではないか・・・そんな不安が国の民も持っていないはずがない。



それでも、心地いい。
枯れそうな心に潤いでももたらすような感激だった。

確かめたい。
この地がどんなところなのか。
何か、手がかりがあるかもしれない。





俺たちの空を、取り戻すんだ。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ