flower garden

□flower garden ー序章ー
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ライラックたちの乗る“ブルーエルフィン”と呼ばれる船は空を泳ぐ。
最近では珍しいが、過去に起きた空賊ブームの際に流行したらしい。今となっては、幻のキャラベルとも呼ばれるほど、時代も変化した。
今の世では材料の調達も難しく、木造の船を作る気力すらも、民に無いのかも知れない。

だからこそなのか、この船は、ライラックを含む4人のクルーによって成る“クフェア空賊”の家であり、宝であった。


ライラックたちは、船を港に泊めその地に足を踏み入れた。
港といっても、昔とは違い浮遊船を泊めれる海港はない。崖に面した岬に碇を降ろすしかなかった。


「上空から見たところ、入国ルートは2つ。この森を抜けるか、反対側の国から通じる道を通るか、やね…」

クルーの一人、ライラックの兄であるフロックスが案をだす。

「反対側の国って…あそこはダメっすよ。取締りが厳しくて、自分たち空賊は入国すらできないっすから。」
「なんだよサフランは気が小さいのか?んなもん、蹴散らしちまえ。」
サフランは弟分。彼の豊富な知識にはいつも関心するが、クルーで一番の小心者だ。
だが、サフランの意見も一理ある。

「ふーん。じゃ、森抜けないけんねー。」
フロックスは面倒くさそうに言った。それもそうだ。
さすがに、森には光は入ってこない。闇に覆われた森など、野獣の住処。それも、闇に狂わされた猛獣たちだ。


「かと言って、武器なんて持って行くと、入国に面倒かもしれないっすね。どのくらい取締ってるのか、分かんないすから…もしかすると空賊てバレた瞬間、牢獄行きかも!」
「そんなん、どこの国も同じやん…牢獄どころか、瞬殺されたりしてなー。」
慎重なサフランの意見を、フロックスはさらりと流す。

「ま、大丈夫、大丈夫。バレない、バレない!」
ナイフを腰に収めながら陽気に言った。

「おい、そのナイフ・・・何の為に?」
「もしもの為に!だって俺たち空賊なんよ?もしバレたら俺等をこんな国がすんなり入れてくれるわけないやん・・・」


さっき言っていたことと、全く正反対なんだが…どっちだよ?

だが確かに、そのとおりだ。
俺たちはこの船のキャプテンに言われた通りにここに来ただけだ。
空賊なんかが、城に招かれるはずもない。

「どうするんすか、ボロニアさん?」
「つべこべ言うな。丸腰にきまっとるやろ!?」
「親父ぃっ!ナイフくらいはいいやろ?…森でスターチスに遭遇したらどうするん!?」
「たく…スターチスくらいの獣、素手で倒せ、素手で!!」

こんなムチャクチャを言うのが、この船のキャプテン…フロックスの父親である。
ボロニアは、一人先に森の中へと入っていく。
森を抜ければ国に入れるはずだ。
だが、本当に入れるのか?


不満を持ちながらも、ライラックたちはその後を追っていった。


森は薄暗く、何処からか鳥の鳴く声が聞こえている。
恐らく、肉食のベルガモットだろう。

更に奥に行くたびに、空は徐々に消えていった。
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