flower garden

□flower garden ー序章ー
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草が生い茂り、足元は不安定で、たまにヌルッと滑る。
道無き道を、先頭にボロニアが、その後ろをクルーの3人が行く。
時折、ベルガモットの鳴き声がすぐ頭上で聞こえた。


しばらく進んだところで、小道があるのを見つけ、その道にたどってボロニアが歩み出したが、ふと、フロックスが足を止めた。

細い脇道を目でたどっていくと、その先に大きな岩が見える。墓石のようだが、名前は彫りが浅くて消えかかっている。


「なあ親父…オレ、ここ、知ってる・・・」
「そりゃあそうやろ、此処には一度来たことがあるんやけな」
「・・・そうなんすか?」

キャプテンの答えに疑問をあげたのは見習いのクルー、サフランだ。
「ああ、サフランが俺たちに会う前やけどな」
ボロニアは前方から視線を変えることなく、歩き続ける。
歩みを止めていたフロックスも、また進み出した。
「ワシとお前がライラックに初めて会った場所やけど…覚えとらんのか?」
「ライと・・・?」

そういわれてみれば、こんな森だった気がする。
森の中で、傷だらけで衰弱していた子供を船まで連れて行き、介抱して・・・
フロックスも少しずつ思い出してきた。

記憶を無くした子供・・・勝手に自分の弟にして、本当の兄弟のように一緒に過ごしてきたんだ。

例え血は繋がらなくても、自分たちは兄弟なのだと、はっきり言える。


それはライラックもおなじだった。



「なるほど…この森は覚えてないけど、船で弟にされたのは、ちゃんと覚えてる。懐かしいな。」
「うん。あの時のライ、可愛かったよなあ。今はこんなに口の悪いヤツなんやけどね」
「そういうフロは…適当なところは、今も変わんないな」
二人は互いに笑った。
「ほら、見えてきたぞ。」

ゲートだ・・・

どうやら、スターチスのような獰猛な野獣には出くわさずにすんだようだ。
4人はゆっくりとゲートへ向かっていった。
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