flower garden

□flower garden ー序章ー
5ページ/39ページ








「うわ・・・ダリアが・・・」
「まさか・・・入国に金とられるとはな…」

先ほどまで懐かしい記憶に笑っていた二人は、苦い顔を見せる。
国のゲート内には、賊であることがバレずにすんなりと入れたものの…


後は頼んだ!と勝手に入国して去っていった馬鹿親父と、ダリア持ってないっす!と笑みをもらした義弟。
「さて、ボロニアさんを探さないとっすね!」
見習いのくせに、兄貴分の二人にダリアを支払わせたのにこの笑顔。このクソガキを一度殴り飛ばしてやりたい。


「なあライ、あそこが城みたいやね…」
「ああ、この空を守ってるっていう、特別な力を持った王家…どんな奴らなんだろうな?」
とりあえず、下っ端の頭に軽く拳骨を与えた二人は、城へ向かって歩き出す。

ゲートを超えてからすぐの城下町。人はそれなりに居る。


つい数日前までいた国を思い出す。そこは既に闇に狂った国で、草木は枯れ果て、民は食べ物に飢え、まるで地獄だった。
それに比べれば…

「光があるだけで…こんなにも違うんだ…」
街の花壇に、花が咲いているわけではない。
雑草くだけだ。それでも、生命というものを感じた。


ちょうど、広場に差し掛かったころ、ライラックは噴水に目をやった。
水に勢いはない。ちょろちょろと流れているだけ。それでも、枯れてなどいない。


ふと、縁に立って噴水を見上げる女性が、不思議と目についた。
この国は金色の髪をしている者が殆どだが、その女は茶色い色をしている。
笑っているようだが、どこか寂しそうな表情に思えた。

そこにどんな感情が込められているのか、皆目検討がつかないが…何か引っかかる。


そして、フロックスに呼ばれて、その場を去ろうとした刹那である。

その女と目が合った。

暗い青と黒のオッドアイ。
なぜか、その瞳から、目が離せない。吸い込まれるような感覚・・・

「ライラック?」
「え?あ、わりぃ!」

フロックスが不思議そうに近づいてきて、我に返った。
「大丈夫か?お前、女の子に一目ぼれは良いけどさあ・・・」
「ばっ、ばばばば馬鹿か!そんなんじゃ!」
「ぷっ」
顔を急に赤く染めたライラックに、フロックスが肘でつつく。
早く行こうと手を引かれてしぶしぶ歩きだしたが、もう一度噴水を見ると、もうそこに彼女はいなかった。


だが、変わりに目に飛び込んできた者たち…



「フロさん…ライさん…あ、あの…人たち…」
「……。」
「…。」

しばし、硬直して、状況を考えた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ