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□ヤサシイ魔法(TOA)
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「さっみぃ〜〜っっ!!」
ガチガチ歯を鳴らしながら叫ぶルーク。
ここは辺り一面銀世界、雪国のケテルブルク。
温室育ちのルークは、初めて見る雪景色に最初は興奮していたものの、余りの寒さに次第にテンションが下がっていった。
「おやおや、ルーク。
若者がこんな程度で音を上げてどうします。」
笑みを浮かべながら飄々とジェイドが言った。
「旦那は雪国生まれの雪国育ちじゃないか。」
「そうですよぉ〜。
レベルが違ーう!
このままだとアニスちゃん、凍え死んじゃいますよぅ〜」
苦笑いしながら言うガイと、ブーブー文句を言うアニスの言葉に、ジェイドは眼鏡を押さえながら、
「全く…私だってもう年をとってしまって…ゲフゴフゲフン!
ああー寒い寒い」
「わ…わざとらしいですわ…」
ナタリアのツッコミ。
「失礼な。
私はいつでも強気に本気ですよ?」
「旦那…そのフレーズはいささか少女趣味だ…」
やんややんやと四人が騒いでいる中、ルークはただ寒さに震えていた。
ふと横を見るとティアがミュウを抱いて静かに歩いていた。
(ずっとクリフォトに暮らしていたティアも、こんな寒さは初めてなんじゃないだろうか…)
ティアの顔を見ると、寒さの為か頬が上気している。
ミュウは寒さのせいか縮こまっていて、ちょっと眠たそうだ。
「ティア…大丈夫か?」
声をかけると、ティアが驚いたようにルークの方を向いた。
「えっ?……ああ!
大丈夫よっ…
…私はミュウを抱いてるから…少し暖かいわ」
ミュウがパッと目を覚ましキラキラした瞳でティアを見た。
「僕お役に立ってるですの?」
「ええ、とっても」
ミュウに柔らかく答えるティア。
ルークはなんだか心が和んだ気がした。
「そっか、ならいいや」
ティアがジッとルークを見つめた。
「…ん?なんだ?」
「貴方の方がずっと寒そうだわ…」
ティアの視線の先は、ルークのお腹。
それに気付いたルークが顔を真っ赤にして言った。
「おっ…俺は鍛えてるからいいんだよ!///」
「ミュウを抱けば少しは…」
「いやっ!///
俺は大丈夫だから!」
急に歩調を速くして遠ざかっていくルークを見て、ティアとミュウは顔を見合わせた。