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□変化
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例えば
少しだけ食べる量が減っただとか
鏡を見る回数が増えただとか
新しい服が欲しくなったりだとか
それは、些細な変化

「弥子ちゃん、もう食べないの?」

隣には、煙草をふかす笹塚さん
正直言って、お腹は全く満たされていない
意外そうな顔をして、笹塚さんはこっちをみつめる。
反射的に下を向き、黙り込む
「弥子ちゃん?」
覗き込まれて、慌てて首をふる
「何でもないんです!気にしないで下さい!」
そう?と言って、笹塚さんはまた煙草の煙を吐き出す。
「もしかして…」
「…はい?」
きょとんとして笹塚さんを見つめた。笹塚さんは一瞬笑って、それから言った。

「ダイエット?」

なんだか無性に恥ずかしい

「え?」

「だっておかしいでしょ、弥子ちゃんがこれしか食べないのは」

言って立ち上がる。
慌ててそれに続こうとしたが、肩に手が置かれたからそのまま座っていた。
笹塚さんは後ろからかがみ込んで、耳元で囁いた。

「こんなに細いのに、別に痩せる必要なんてないと思うけど」

「別に痩せたいわけじゃ…!!」

「俺はよく食べる女の子、好きだけどね」

顔が熱くなるのが分かった
そしてきっと、後ろに立つ笹塚さんも

「トイレ行ってくる」

照れ隠し?

なんだか嬉しくて
その背中を見送る
そして机の横のメニュー表にもう一度手を伸ばした。

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