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□理由
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存在する理由がどこにあるのだろうと今まで何度も考えてきた。
広大なゴミの町に
行き交う人の波の中に
薄暗い路地裏に
青空の下に
曇り空の下に
この世界に、自分が存在する理由があるのだろうかと


クロロは必ずそこにやってきて
黙って側に座っていた
あたしも何も言わずに
ただ雨粒を眺めていた
この町では一瞬で時間が通りすぎて行く
しかしその空間の中には、驚く程に緩やかな時が流れていた
時が過ぎてあたしもクロロも大人に近づいた。時折クロロは猫のようなキスをあたしにした。あたしはただ、黙ってそれを受け入れた。それは信頼だと思っていた。

旅団の仲間に入れてもらい、流星街を出た。それも今となっては昔の話だ。
クロロは時たまあたしを呼び出して、用事をいいつける。必要な呼び出しだとは思わなかった。クロロは必ずあの猫のようなキスをあたしにした。それはクロロに必要なのかと思った。

違った。必要としてたのはあたしだった。

おそらくクロロもそれを分かっていた。
いつかの廃虚であたしは膝を抱えて、自分が存在する理由を探した。すんなり見つかったその理由は単純だった。
指先でそっと唇に触れ、あの猫のようなキスを思い出す。

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