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□不安な日
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仕事の事で精一杯だった
でも、さっきの弥子ちゃん…

「あの、笹塚さ…」

不安そうな、怯えたような声が蘇る

盛大にため息をついて
煙草の煙を吐き出す
疲れきっていた脳が、ゆっくりと動き出す

そして、冷や汗

「あ…」

カレンダーを見つめる
そして、ついこないだ会った時の弥子の言葉を思い出す

「おかしいんですよね…そろそろなはずなのに」

ついでに、自分の吐いた冗談までをも思い出す

「そしたら、結婚すればいい」

いや、冗談じゃない
でも…
不安そうな、怯えたような弥子の声
「もしかして…」
ぶっきらぼうな電話の切り方を悔いる
「やべ」

車を猛スピードで走らせ、自分のマンションの階段を駆け上がる
ドアが開いていた事に、なんだか少しほっとして、それから中に入る

「弥子ちゃん」

できるだけ優しい声をかける


弥子ちゃんは、台所に立ち夕飯の準備をしていた

「あ…おかえりなさい」

「ただいま」

えーと、その

弥子ちゃんの鞄から、少しだけ見えていたそれ″

ああ、やっぱり

弥子ちゃんを後ろから抱きしめて、耳元で囁く

「ごめん…」


「勘違いでした」

「え?」

胸に広がる安心感
弥子ちゃんは笑って
大丈夫ですと言った

「でも…」
怖い思いをさせてしまった

「ごめん」

弥子ちゃんは振り向いて、にっこり笑う
そして俺の手をとって、言う

「結婚、してくれるんですよね?」

いつかの未来、もしそうゆうことになったら

「当たり前」

その時は、もう一人で怖い思いはさせやしない
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