Main

□手の繋ぎ方
1ページ/1ページ

横断歩道の雑踏の中、弥子は笹塚を見失った。

さっきまで横を歩いていたのにと不安が襲い、弥子はキョロキョロと辺りを見渡すが、人ごみの中に銀の髪は見当たらない。
『どうしよう、はぐれちゃった』
途方に暮れて眉を落とした瞬間
「弥子ちゃん」と名前を呼ばれ、振り向けば探し求めた笑顔があった。
弥子はほっと安心したように顔を緩ませて、再び笹塚の横に並んで歩き出す。

「良かったぁ。はぐれちゃったかと思いましたよ!」
あははと笑って笹塚を見上げる。
「ん、人多いからな…」

「そうですね…って笹塚さん?!」
気づけば片手が笹塚に握られていて、弥子は瞬時に顔を赤らめた。
「なんか違げーな」

「はい? 」

笹塚はそう呟いて手を握り直す。

「あ、あの…」
「んー、やっぱしっくりこねぇな…やっぱこうか」
指と指を絡ませ、笹塚は満足げに微笑む。
「あの…」
「ん? 」
不思議そうな顔をして、笹塚は弥子の顔を上から覗き込む。
「いや『ん? 』じゃなくて…その、いいんですか? 」
しっかりと繋がれた手を見つめる。
笹塚はいつものスーツ姿で、弥子もいつもの制服姿で、そんな二人が手を繋いで歩くのは周りから見れば滑稽で…。

「いいんじゃない? 」
「で、でも! 」
笹塚は繋いだ手を持ち上げて、弥子に笑いかける。
「嫌? カップル繋ぎ」
笹塚は一瞬眉を上げて、夕方だし目立たないよと笑う。
弥子は顔を赤らめはにかみ、しっかりと繋がれたその手を見つめる。

「…彼氏彼女、って感じですね」
「ん、そーだな」
二人目を合わせて、幸せに微笑み合う。
雑踏の中、手を繋いで歩く二人を夕闇が優しく人目から隠した。



悩んだ経験ありませんか?
手の繋ぎ方(笑)
いつ繋ぐかじゃなくて、どう繋ぐか…。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ