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□第170話補完
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第170話補完…
つまり柚木が勝手に想像した裏話的な物です。ネタバレを含む上、かなり柚木の勝手な妄想を含みます。
まだジャンプを読んでいない方、展開を邪魔されたくない方はご遠慮下さい。

























…でございます……
濃くて危ない時間の後にジェニュイン本人から暴かれた目を瞑りたくなるような真実。そのあまりの衝撃に立ちすくむ弥子のポケットで携帯のバイブが震えた。ディスプレイには笹塚衛士″の文字が映し出されている。
「ネウロ、ちょっといい? 」
言えばネウロは何かを考えている最中なのか、真剣な顔のまま頷いた。後ろからネウロ様と呼びなさいというジェニュインの叫び声が聞こえ、弥子は苦笑いを零しながらその場を離れ携帯の通話ボタンを押す。
「もしもし、弥子ちゃんもう知ってるかもしれねーけどさっき笛吹から電話があって…」
「施設の事、ですよね…今ちょうど知った所です」

「「……」」

お互いに黙り込んでしまうのは、それだけ事が重大で、危険だという事。

「弥子ちゃん」と先に口を割ったのは笹塚だった。きっと危ないからと言って止められるのだろうと悟り、弥子は頭の隅で言い訳を考える。

「弥子ちゃん、今夜家においで」

予想していたものとは全く異なる言葉に、弥子は目を見開く。
「今夜、ですか?…いいですよ」
「ん、じゃあ来れそうになったら電話して、迎えに行くから」
それから二言三言言葉を交わして電話は切れた。

ネウロの所へ戻れば未だジェニュインはネウロにぴったりと張り付き、当のネウロは何かをまだ考え込んでいるようだった。
「ネウロ、私今日はちょっと早く帰っていいかな」
疲れちゃったし、と続ければネウロは顔を上げ、不気味な程すんなりと頷いた。



『やっぱりネウロも、事を重大に見てるんだ』

笹塚の迎えを待ちながら、弥子は頭上に広がる夕焼けを見つめた。
空はいつも通りに穏やかで、世にも恐ろしい出来事がこれから起こるのだとは想像もできない。
きっと明日も晴れるのだろうと思いながら、弥子はため息をついた。

やがてやって来た笹塚の車に乗った後も、弥子の頭の中ではジェニュインが暴露した言葉とネウロの深刻そうな横顔が回り続けた。
「弥子ちゃん」という笹塚の声にハッとし顔を上げれば、笹塚は落ち着いた表情で弥子を見つめ、もう着くよと言葉を続けた。

煙草の匂いが充満するその部屋で食事を済ませ、ゆっくりと酒の入ったグラスを傾ける笹塚を弥子はぼーっと見つめていた。
今日はどちらとも、あまり言葉を発しない。

「あ、あの…」
「ん? 」

弥子が堪り兼ねて言葉を発すれば、返ってくるのはいつも通りの短い返事。
「止めないんですか? 」
笹塚は小さくため息をつき、手を伸ばして弥子の頭を撫でる。

「…弥子ちゃん、言っても聞かねーだろ」

あははと笑い、笹塚の顔を見れば、そこには真剣な表情が浮かんでいた。
「おいで」と手招きをされ、弥子は笹塚の腕の中へ滑り込む。

「弥子ちゃん」
低い声が、自分を呼ぶ。
「なんですか? 」
静かな声で返事をした。

「ちゃんと帰って来る事」

約束な、と呟いて笹塚は弥子を後ろから抱きしめる。
「はい」と小さく頷いて、全身で笹塚の体温を、鼓動を感じる。
戦いは、もうすぐそこまで迫っている。
しかし今日だけは、今だけは、弥子はもたれかかるように笹塚の胸に体重を預けた。




※ はい。第170話補完って事で。
この約束をした時に、笹塚さんの中では弥子ちゃんを守り抜こうっていう決意が生まれてたら素敵だと思います。





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