ナイトメア・ラビット

□第一章 「アヴァロン」
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「ただいまー」
と、予定外の労働に少し疲れ気味のアンリ。

「うおおお!!今日の晩メシは、さてはカレーだな!?
腕がなるぜぇ〜〜」

…なんで食べる方の腕がなるんだ!
なんでおまえはそうも元気なんだっ!?

と、突っ込みたいことはいろいろあったけれど、疲れたから、年の差のせいだと思うことにした。

五年って結構でかいなぁ……

そんな少々年寄りじみた事を思っていると、仕事を終え居間でテレビを見ていたランファと遭遇した。

「おかえり〜」
と、こちらには目を向けずに声をかける。ソファーに寝転がったままなのも、もはや見慣れたものだ。

「ランファ、おまえねぇ…」

だからってその格好は如何なものか。
仮にも嫁入り前の娘が!

「なによ、また小姑じみた事考えてんの?
そんなこと言ってると女にモテなくなるわよ〜?」
アンリの心理を見透かしたように、
きっとタバコを吸っていたら煙を相手の顔に吹きつけていそうなふてぶてしさだ。

「別にモテなくていいし! そういう自分だって男にモテなくなるぞ!」

すかさず反論する。しかし、悲しいかな。なんだか始まる前から勝敗が決まっているような雰囲気だ。

「ご心配どうも〜。 あ、喉乾いたからなんか持ってきて!」と、手をヒラヒラと動かす。

まったく!また人をパシリにつかって!
いい加減にして欲しいよ、ホントに!!
そんなんじゃ、嫁入り先が見つからないぞ!

心の中で激しく反抗しながら、体はちゃんと言うとうりにしてるあたり、日頃の強弱が伺われる。

「アンちゃんまだー?」
「アンちゃん言うな!」
やば、ちょっと泣きそう。


「そーいやハイネやシズカは?社長がいねーのはいつもだけど!」
テレビを見ながら、もうすぐ夕げだというのに、なにやら口に詰め込みながら聞くカイト。
後ろから嫉妬に駆られた女豹が睨みをかましている。

「…なんで…
なんであんたは太らないのよっ!!
こちとらカロリーとか気にしまくってるってゆーのに!」

不公平よ!と叫ぶランファに最近体重が減ったと愚痴るカイト。
噛み合ってない…恐ろしく噛み合っていない

カイトの空気の読めなさは、ある意味無敵でもあるようだった。

「ちょっと2人とも〜! ダメじゃない、そんなことで喧嘩しちゃ。 ほら、もう少しでご飯だからカイトちゃんも控えてね?」

と、夕食の準備をしていた、みんなの頼れる寮母、シオンさん。
気が利いて、面倒見が良く、それでいて怒ると物凄く恐い男性だ。

いや、決して打ち間違いではなく、正真正銘男なのだ。我らが寮母は。

誰よりも女性らしく(内面は) 母性溢れるすばらしい人だ。
思わぬ行を喰ってしまったところで、
ご飯の支度ができたようだ。

「あっ、そうそうアンリちゃん!ハイネちゃんをラボから呼んできてー
あとシズカちゃんは仕事で外で食べるそうよ」

ふーん、そうなんだ。なんか近頃そういうの多いなー
そしてシズカちゃんってちょっと面白…………

「って、はいいいぃぃぃぃ!!?」

勢いあまって持っていたコップを落としかける。

「いっいやだ!!あんな所に行くのは!念話で呼べばいいだろ?」

そうとうイヤなのか席に座ったまま動こうとしない。

………が、

「うっさいわねぇ……。早く行け!ヘタレが!命令!!」

かの女豹は人の心をいとも簡単に引っ掻くよ、ママン…


地下室。
一見、ただの大きめな民家にしか見えないわが城だが、意外に設備は充実している。

この薄暗い廊下の先にある地下室もそのひとつで、うちのドクターが研究室として使っている。

それだけなら良いのだが…

「相変わらず、悪趣味…」

廊下には至る所に人体模型と変な生き物の写真などが並んでいる…

「はぁ……ハイネ!晩ご飯ー!!入るぞ! 」

研究中の奴はめったな事では外に出てこない。し、呼び掛けても気づかない。
だからこうして中に入るしかない訳だが…

ぺと…
「ん、なんか落ちてきた…………ぅああああぁぁ!?」

落ちてきたのは、一匹の生きたヘビだった。

「おまっ!俺がは虫類苦手なこと知って! はやく何とかしろ〜〜!!」

もはや涙目なアンリに対して、すごく楽しそうな糸目の男がヘラヘラ笑いながら出てくる。

「いや〜すいませんねぇ♪うちのエミリーが〜〜」

絶対わざとだろ。この変態マッドがぁ!


やっとのこと地下室をでて食卓に向かおうとする。

「ていうか、今回の引きこもりはずいぶん長かったけど、いったい…」
「よくぞ聞いてくださいました!
今回はですねぇ〜

楽しそうに語りだすハイネ。違法研究とかはマジで勘弁してください。

「アンリ君!人を犯罪者を見るような目で見ないで下さいよ〜! 私、これでも常識に関してはうるさいんですよ?」

「どの口がそんな事ほざくか!!どの口が!」
毎回生体実験対象になってるこっちの身にもなっとほしい。
「ん〜〜この口です〜」
「キモっ!うざっ!!近い止めろ殺す気か!?」

力ずくで距離を置かせる。
変態マッドなホモ野郎のやる事は予想できない…

今まで、いわゆる同性愛者の人に自分は割と多く出会ったことがあると自負するが、こいつはいろんな意味で、ヤバい。
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