Novel
□白蝦夷菊
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9月10日、23時50分。
やがて日付は変わる。
隣に向かい合って眠るのは、ボクと同じような銀髪の、少年。
少年の手はボクの服を掴んで離そうとしない。
その手にボクの手を重ねる。
「あったかい……」
とても氷雪系最強の斬魄刀、氷輪丸を持ち、護廷十三隊の隊長とは思えない程、あどけない表情をして少年は眠っていた。
少年の寝ている所よりやや先にある棚を見る。
その上に飾られた、白い花。
「蝦夷菊っていうんだ。9月10日の誕生花は白蝦夷菊なんだって松本が教えてくれて……。いいだろ?お前みたいに白くてさ」
そう言って、今日誕生日プレゼントとして渡してくれた花。
花言葉は『信ずる心』。
少年が教えてくれた。
ボクをこの少年は信じてくれてんのやと。
こんなボクを。
「お前みたいに白くて」
ちゃうよ。
ボクは白くなんかあらへん。
真っ黒や。
ボクを信じてくれとるキミを置いていこうとしとるボクなんて。
「ご免な…冬」
額に口付ければ、少年は僅かに身動ぎをした。
後日、ボクは蝦夷菊について調べた。
花言葉の一つに『さようなら』の文字。
まるでボクらの未来を言っているようで。
ボクは静かに本を閉じた。
End