tennis

□病的なほどに
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「ねえ仁王」

「何じゃ」

綺麗に晴れた秋の昼休み。
俺は仁王のいるクラスを訪れた。

「おまえを壊したくてたまらないんだ」

びくっと、彼が小さく震えるのをみた。
自分でも驚くようなこの感情。
しかしそれに震える彼すらも愛おしい。
俺はどうかしてるのだろうか。

好きだから壊したくて、殺したくて。
醜い破壊衝動。
そんなのいけないとは分かってるのに。
でもそれを欲する自分がいる。
今目の前の彼の首を絞めたりしたら。
切り刻んでしまえたら。
それによって彼が苦しんで
苦痛に顔を歪めて。
何も悪くない筈なのに俺に許しを乞う、なんて。
考えただけで興奮する。

「…お前さんは、そんなことできんよ」

ぽつりと仁王が言った言葉は、不思議と耳に入ってきた。

「なぜ?」

俺は組んでいた腕を解き彼の首に指を添える。

「今力を入れたら、お前は死ぬんだよ?」

「それならやってみてもいいぜよ」

首を絞められないという絶対的な自信があるのか
余裕に笑ってみせる彼。
なんだか無性に腹が立ったから
「そう」といって指に力を入れた。

しかし、首を絞めることはできなかった。

俺の指は、手は、腕は、重力に従ってだらんと垂れた。
それをみた彼は「やっぱりな」と笑う。

「お前さんは俺に依存してる」

いきなり何を言うかと思えばこれだ。
さすがと言うべきか、本当彼には掴み所がない。
それが面白いのだけれど。

「それと何が関係ある?」

「お前さんは俺のことが好きじゃろ?
俺もお前が好きで、お前がいなければ生きられない。
それと同じ。
お前は俺が好きで、俺がいなければ生きられない。
そういうことナリ」

「Right?」彼は柳の真似をして俺に問う。
全く、君はほんとに憎たらしいね。

「じゃあ今はそう言うことにしておいてあげる」

その通りだね、と
素直に認めるなんて嫌だから
俺は本当の言葉を青空の下に隠す

(今日も空は青いね!)(何じゃいきなり、分からん奴…)(分からないのはお前だろ!)


fin.
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