「ガキが一人ついてきてるな」

「え!キャプテン、捕まえる?」


すぐ後ろを歩いていたベポが後方へ向かおうとした。

「いや、いい。ほっとけ」


そのガキはじっとこちらを窺いながらも、平静を装っていた。
その証拠に、気付いたのはおれだけだ。

ただのガキには違いない。だが、気になった。
尾行の仕方だけじゃない。
真っ直ぐに感じる視線は、確実におれだけに向けられている。

手配書が出回っているのだから、おれを知っていてもおかしくはない。
だが、付いてくるだけだ。
何をするわけでもない。
もちろん殺気すら感じない。

普段おれに向けられる視線は殺気を孕んでいることが多い。
だが、それでさえこんなにも無遠慮に投げ付けてくる命知らずな奴はいない。



「フ…面白い」

「キャプテン?」

「…ベポ、行け」

「! アイアイ!」




これはただの暇潰しだ。
だが、もしかしたら。



「おい、名前は」


このガキはおれを楽しませる何かを持っているかもしれない。
こいつの身に纏う空気が、投げ付けられる視線が、そう思わせる。

こいつは、今までに会った奴らとは違う。

単なる直感でしかないが―



おれの直感は、よく当たる。


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