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感謝を込めて






【クロネコ】〜第3話〜








「マジかよ」


帰ったら玄関にまだある泥だらけの靴。ベッドの中に在る体。

まだ寝てるなんて。


「なあっ…ちょっと…!」


掛けてやった薄手の毛布の上からその肩を揺さぶってみる。が、起きない。


「ったく、なんなんだよこいつ」


溜め息と共に、力が抜けた肩からバッグがずり落ちた。一護はすんでのところで床に落ちるのを防ぐ。“盗られて困るもの”を詰め込んだバッグはそれなりに重い。ずっと空部屋だった下階に新しい住人が入ったのは日曜日。音が五月蝿いと怒鳴り込まれたのが火曜日。の、今日は木曜日。
ふぅ、と、息を吐き、一護は静かにベッド横に胡座を落とした。しん、とした中に聞こえてきたのはすうすうと規則正しい寝息。


「……………」


ベッドの中の小さい体に目線をやる。


(…具合、良くなったんかな…?)


ベッドに身を近付ける。毛布から出ている首から上。昨日はそれどころじゃなかった分、まじまじと顔を覗いてやる。


(…白っ…長っ)


細い首は白くて、頬はほのかな桃色に、長い睫。顔全部は見れない。髪の毛が邪魔をしている。けど、綺麗な黒髪。


「!!」


急に動いたその小さな体に、180pを越える体はびくつき固まった。しかし、その小さな体はさらに小さく丸まっただけで、また寝息。


「…お、起きねぇのか、よ…」


180pの緊張損。丸まった体に遅れて、さらさらと黒髪が動いた。


「そういや−」


こいつ、猫って事になってたな。

シーツの上に流れた黒髪が艶めく。


「……黒猫ってとこか」





〜続〜


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