長き旅

□涙と雨と
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「ん…い…たっ…何が?……イャ…ウソ…」
紫蘭が目を覚ますとそこには地獄絵図が広がっていた。山中にバスの残骸が散らばり、同乗していたツアー客達が無残な姿で転がっていた。
「イヤ…なんで……き…きょ…うこ?さ、さがさ…ない…と」
あまりの出来事にパニック寸前に陥るが、紫蘭は自分にとってただ一人の友人と言える京子を探し出した。
「き、京子」
紫蘭が倒れていた場所から、さほど離れていない所に京子は仰向けで倒れていた。
「よかった…京子…大丈夫?」
紫蘭は倒れている京子を抱き起こした。
【ヌルッ】
抱き起こした京子の後頭部からは、大量の血が流れていた。
「京…子?」
既に冷たくなっていた京子の頬を紫蘭は撫でた。
「ねぇ……ウソでしょう…おきてよ…」
いつの間にか降り出した雨と、紫蘭の頬を流れる涙が混じり合い京子の顔に落ちていった。
「また…私だけ?なんで…京子のいない世界に…いたくない…」
必死に繋ぎ留めていた紫蘭の意識が遠くなっていった。
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