小説

□白の空漠
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「…ブリタニアの第二皇子が、こんな所に何の用だ」
「ここにくれば君に会えるかと思ってね」
面白そうな顔をして現れた緑の髪の少女に、シュナイゼルは感情を読ませない笑みを湛え対峙した。
男の雰囲気にC.Cは顔をしかめた。
「何が目的だ」
「力が欲しい」
「なぜ私に頼む」
男の答えに少女は薄ら笑いを浮かべた。シュナイゼルの青みがかった紫の瞳が暗い色を宿す。
「あの子が傷ついてしまったから。あの子はブリタニアを壊し、すべてに決着をつけたら、きっといなくなってしまう。私はルルーシュに生きていて欲しい。世界があの子にとって優しいものでないのだとしても」
「例え自分が殺されてもか」 冷たい響きのC.Cの声に動じることなくシュナイゼルは頷いた。
「そうだね。私はルルーシュのいない世界になど興味はないから」
C.Cは面白い男だと思った。
「いいだろう。お前に力をくれてやる。だが、お前に運命が変えられるか?運命とは大河のようなもの。遥か昔から流れ続ける、人には変えることの出来ない道筋だ。それに仮に力を手に入れたとしても破滅を選んだルルーシュを止められるのか?」
少女の問いにシュナイゼルは帝王に相応しい笑みを浮かべた。
「道筋が他にないと言うなら作ってしまえばいい、多少強引な手を使ったとしてもね」
「傲慢だな」
言葉に反しC.Cは楽しげに言った。
「お気に召さないかな」
「いや自分が正しいと信じて疑わず、醜悪な正義を振りかざしている馬鹿よりよほどいい」
少女の言葉に脳裏に愚かな騎士の姿が浮かぶ。
「私はルルーシュに全ての真実を話す。あの子は全てを知って逃げ出すほど弱くはないよ」
C.Cは初めて目にするシュナイゼルの優しい笑みに目を見開いた。
「それが、お前の願いか。ならば契約を」
シュナイゼルは少女の前に跪いた。
「最後の瞬間はあの子の傍にいてやって欲しい。君の中にはマリアンヌ皇妃がいるんだろう?」
「なぜ…いや愚問だったな。――シュナイゼル皇子」
少女の口調が柔らかく歌うようなものに変化した。「お願いがあります。ルルーシュを抱き締めてあげて。どうかあの子を…」
「私にはそんな資格など第一ルルーシュが許さないでしょう」
青みがかった紫の瞳を曇らせたシュナイゼルにマリアンヌは首を振った。
「それでも抱き締めてあげて、あの子に人の温もりを…」
長くは話せないのか、高貴な雰囲気が消え、感情の見えない少女の意識が再び現れた。
C.Cの金の瞳と目があった瞬間、シュナイゼルは遥かな時の記憶の流れにさらわれた。
次々と流れていくビジョンの中、彼は一番最奥に愛しい弟の後ろ姿を見つけた。
唇がルルーシュと音を紡ぐ前に、制服姿のルルーシュが振り返り、まるで見ず知らずのものを見るような顔をし、何かを言おうとした。
「…ルルーシュと対の右の瞳に現れたか。あれと同じくお前もまた王の力を持つもの…」
魔女の声に、見入られたかのように金の瞳を覗き込んでいたシュナイゼルは、意識を取り戻した。
「これが私の力」
瞳に指をかざし、シュナイゼルはゆっくりと冷たい笑みを形作った。
「そう、それがお前のギアス、゙絶対不可逆゙の力。さあ世界はどう変わる?私は見守るとしようお前とルルーシュの行く先を」




ルルーシュ。私の共犯者よ。せめて最期くらいは傍にいてやる。だから、思うままに自由に生きてみろ。誰のためではなく自身のために。

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