ジャンクフードの中のジャンクフード。
キングオブジャンクフードといえば―――、「そう、ハンバーガー!!」
「…誰に言ってるの?」
ドアを開けた途端、ビニール袋を片手にあらぬ方向に向かって叫ぶリヴァルを見て、カレンが無表情に呟いた。



「だからさぁ〜」
店のロゴが印字された包み紙からハンバーガーを取り出しつつ、リヴァルが口を開いた。
「ハンバーガーってさ、中々難しい食べ物だと思うんだよね」
「難しい?」
その言葉にポテトフライを口に運ぼうとしたシャーリーの指が止まる。
生徒会の仕事で遅めの夕食を揃ってとっている中での一言に、シャーリーだけでなく他の面々も何とはなしに耳を傾けていた。
「パンズとパンズの間にハンバーグを挟んだだけの単純構造の、どこが難しいんだ?」
「違う違う」
怪訝に眉を寄せるルルーシュにリヴァルは勿体ぶった調子でちっちと、指を振った。
「誰も構造がとは言ってないだろ。オレが難しいって言ったのは食べ方だよ」
言うと、リヴァルは自分が持っていたハンバーガーの包み紙をわざわざ剥いで見せた。
「ハンバーガーを食べてて、最後の方に中身だけが残ってしまうって事あるだろ?」
一緒に食べようとしても重なった具材が崩れてパンズからはみ出し、それを直そうとしてもソースで滑り別の箇所からまたはみ出してしまう。
「―で、悪戦苦闘の末、結局は包み紙に中身だけが残ると。どうです奥さん、そういう経験ありませんか?」
「誰が奥さんよ。アンタはどこぞの昼番組の司会者かっての。でもそうね、確かに」
「でしょ〜?」
ミレイの同意にリヴァルは得意気に胸をはる。
「…でも、これはそういう食べ物なんじゃないの?」
「いや違うんだ、カレン!!」
上品な仕草でハンバーガーを食べていたカレンの一言を、リヴァルは即座に否定する。
「お嬢様の君には解らないかもしれないが、ジャンクフードの基本は『手軽さ』と『食べやすさ』なんだ!!その代表格のハンバーガーを誤解されたままでは、彼のサンドイッチ伯爵に申し訳がたたない!!そもそも―――」
あり得ないテンションで持論を語り始めたリヴァルの勢いに、カレンだけでなく一同唖然となり食事の手が止まってしまった。
どうも、カレンの一言が彼のファーストフード魂(?)に火をつけてしまったらしいのだが…。
「意味が解らんな」
「そうね、サンドイッチ伯爵は関係ないと思うわ」
「ニーナ…。まあ、確かにそこも突っ込みどころだと思うけど」
「何て言うかハンバーガーを買ってきた時点からリヴァルってば様子おかしかったわよね〜」
「会長が最近かまってやらないからじゃないてすか?」
「何よそれ、ルルーシュったら人聞き悪いわね」
リヴァルのご高説をまるっと聞き流し、皆口々に好き勝手を言いまくる。
「だって、なあスザク―――」
ミレイの不興から逃れようとスザクの方に話題を持ち掛けたルルーシュが固まった。
そこには触れれば切れそうな程はりつめた彼が―――。
「……スザク?」
躊躇いがちに改めて呼んでみるが、当人の耳には全く届いていない様子で返答をする気配すら無かった。
もしも〜しスザクさ〜ん対峙する相手間違ってませんか〜?
どう考えてもそれに敵意はないと思いますよ〜?
とまあ、内心突っ込み所の満載ではあったが、あえてそこまで口にする勇気は今のルルーシュ、いや、彼の異変に気づいた誰もがなかった。
「…最近パソコンやら読書やらで目が疲れてるせいかな?」
それでも、口許に無理矢理笑みをはりつけ、ルルーシュは手の甲でざとらしく目を擦ってみる。
「私も目にプールの水でも入ったかしら、おかしいわね〜」
「ルルーシュはともかく、シャーリィーそれあり得ないから。っていうか、二人とも往生際悪すぎ」
何とかして現実を否定しようとする双方を、カレンが無情にたたききった。
「じゃあ、あれどうするんだよ!?」
「何で私に言うのよ?てか、泣かれても困るんだけど」
面倒臭そうに顔をしかめるカレンに半泣きのルルーシュは勢いのまま、叫ぶ。
「他に言えないからに決まってるからだろっ!!」
完璧に逆ギレである。
「あのねー…」
カレンは深く息を吐き出した。
「別にいいじゃないの。リヴァルみたく人を巻き込むわけじゃないし。ハンバーガーを睨んでるだけなんだから」
「それが嫌なんだよ!!」
言いながらルルーシュはスザクをビシッと指し示した。
そこにはハンバーガーを片手で持ち、食すわけでもなく無言で睨み全身で身構えるスザクの姿があった。しかも、その様は相手の一瞬の隙を狙う百戦錬磨の猛者の気合いすら感じられる。
ルルーシュでなくても、あれは本気で怖い。はっきり言ってリヴァルよりも質が悪い。
「あんなスザク嫌だっ!」
「嫌だって言われてもねぇ〜。ルルーシュにはあれが何なのか解んないの?」
「解ってたらとっくに対処してますよっ」
「まあまあ、ルル落ち着いて。スザク君の事だもの、きっと深い理由があるのよ」
鼻息荒いルルーシュをシャーリィーが何とか宥めようと言葉を探し、その背後でニーナがそれにこくこくと相づちを打つ。

「そうだ、あれは戦いに挑む戦士の顔だ」
「リヴァル!?」
持論を一人かましていたはずのリヴァルが気付けはすぐ隣にいて、ニーナが驚きに声を上げた。
「戦士って……何?」
「だから、あたしに聞かないでよ」
シャーリィーにつつかれたカレンが嫌そうに顔をしかめる。
リヴァルの目は相変わらずイッちゃってて、とてもじゃないが誰も声をかけたくはなかった。
「スザクっ」
リヴァルは躊躇いなくスザクに歩み近付いて行った。
それに呼応するかたちでスザクが顔を上げた。
「…………」
「…………」
皆が固唾を飲んで見守る中、無言でしばし見つめ合う二人―――。
妙な緊迫感が辺りを漂う。


そして―――、


「………同盟成立?」
「いや、意気投合ってところじゃない?」
がっちりと握手をかわすその眼前で、どうでも良さそうにニーナとミレイが呟き合う。
「でも今会話あったっけ?」
「テレパシーでも使ったんじゃない?」
怪訝に首を傾げるシャーリィーに対し、カレンは興味無さげに返す。
「で、一応ルルーシュの見解は?」
最後に渋い顔をしているルルーシュに、ミレイが気だるげにマイク代わりにストローを差し向けた。
「…大方、リヴァルとスザクのハンバーガーに対する考えが近かったんだろう」
「じゃあ、そういうこで。皆、かいさ〜ん」
それ以上深く考える事を諦めた一同はミレイの一声に、各々何事もなかったように再度食事を始めた。
そして、その日は以降何やら熱く意見を交換しはじめたリヴァルとスザクを極力視界に入れないよう、心掛けて皆行動したのであった。



その後、生徒会では皆食べる際のファーストフードはピザという暗黙の決まりが出来たそうな。









照り焼きは特に食べづらい。好きなんですけとね〜、ハンバーガー……。
そして、説明はいらないと思いますが、サンドイッチ伯爵(爵位うろ覚えで、すいません)はサンドイッチの産みの親。カードゲームが大好きな伯爵は食事の時間も惜しみ、ゲームをしながら食べられる食事をと言うことで誕生したのが片手でつまめるサンドイッチでございます。
サンド繋がりとということでf(^_^;

小説(学園編)

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