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□幸せの音色
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「怒らないで聞いてね」
ベッドと机、それ以外には特に家具の置いてない殺風景な部屋に二人、一人はベッドに腰掛け、一人は窓際に立ちもう一人の人物を見つめながら、ぽつぽつと口を開いた。
「もし、もしもよ、もし」
ルナマリアは小さく息を吸うと言った。
「もしシンが私の前からいなくなっちゃったら、私あとを追いかけてもいい?」
どのくらい見つめあったのだろう。
ぼんやりと蛍光ランプが部屋を照らし、シンとルナマリアはお互いの顔をただ見つめていた。
長い長い沈黙がずっと続くかと思うと、ルナマリアはどこか居心地良く思えて、このままずっとシンだけを見つめていたいとそう思ったとき、シンは駄目ともやめろとも言わずに目を伏せた。
―なんて寂しそうで哀しそうな瞳。
ルナマリアは胸が締め付けられる思いがした。
楽しいことは全部忘れたみたいな、暗闇ばかり見つめるその瞳に、私が映ることはないの?
私があなたから離れるなんて、絶対あり得ないことだけど、恋い焦がれてやまないのが私だけって、ちょっと悲しい。
贅沢なのかな。
沢山人がいなくなって、大切な人もいなくなって、信じてたものもなくなって、
本当に大変だったから、あなたが生きてるだけで、充分幸せなことなの。
ルナマリアは自嘲めいた笑みをこぼす。
だけど私、それだけじゃ満たされないみたい。