Main

□幸せの音色
2ページ/5ページ

ルナマリアの質問にシンが何も答えなかった日から数日後。
ルナマリアの元に作戦命令が下された。
すぐにでも出発するというので準備をしていると、話を聞きつけたシンがけたたましく部屋に入ってきた。

「地球軍が放棄した基地の調査だって。シンとは別行動だね」
荷造りをしながらルナマリアはシンに言った。

「ルナ…」

呼ばれてルナマリアが振り向くと、不安と恐怖の入り混じった顔でシンが立っていた。

「やだもー、なんて顔してるのよ」

ルナマリアはいつも以上に明るく言った。ちょっと失敗したかもしれない。無理してるのが、シンに伝わったのか、シンは一層表情を曇らせてルナマリアを見た。
これ以上シンを心配させまいと心掛け、ルナマリアは荷物を持ち、ドアの方へ歩みを進めた。

「大丈夫よ。私一人じゃないんだし。シンもちゃんと自分の仕事するのよ。…じゃあね」

ぐいっと手を引っ張られ、ルナマリアは足を止めた。

きつく自分の手を握りしめているシンの手は小さく震えている。
きつく握りしめることで、その震えをなくそうとしているのがルナマリアにはわかった。
うつむいたシンの顔を窺うことはできない。
ルナマリアは優しくシンの手を握り返す。
ぱっと顔をあげたシンの顔は今にも泣き出してしまいそうだった。
ルナマリアは小さく微笑んで、シンの手を名残惜しそうに離した。

「――行ってくるね」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ