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□Creme de Cassis
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運命の赤い糸。
それは言葉のとおり、自分と運命の相手を結ぶ見えない糸。

赤は運命の色であり、残酷な色。

彼女にとって「赤」は生きる糧でしかなかった。

これは小さな恋が奇跡を呼んだ物語。








とある小さな町のはずれ、木々でできた自然のアーチをくぐった先には大きなお屋敷があった。
四季豊かな自然に恵まれたこの町の、どこか不釣り合いなレンガ造りのこの屋敷に、一人の少女が越してきた。
そのお屋敷は長い年月放置されており、持ち主もわからなければ誰かが住んだという記憶すらなかった。
そのため町の人たちからはちょっとしたホラースポットでもあった。

町の人の話によると、そこに越してきた彼女は、亡くなった祖母の遺産としてその屋敷をもらい、単身越してきたということだった。
彼女の姿を見ることは稀だったが、荒れていた庭には色とりどりの花が咲き誇り、屋敷の周囲の土地は耕され毎年豊かな実りをもたらした。
それらは町の人々にまで分け与えられ、使用人の出入りも多く見られたので、主人であろう少女によくない噂が立つことはなく、ごくありがちな病弱という認識が、人々の間に当たり前のように存在していた。

その点に関しては、少女にとって願ってもないことだった。
なるべく人とは関わらない方が、彼女の正体も知られることはなかったから…。
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