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□ある朝の出来事
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「さて、と」
ルナマリアは朝食の準備を手際よく済ませ、壁にかかる時計に目をやった。
「そろそろシンを起こさなきゃ」
にしてもシンのやつ、あんなに近くで目覚まし時計が鳴ってるのに全然起きないなんて。
物音にも反応しないんだから。
本当に目覚めが悪い。
エプロンを取ってルナマリアは寝室に向かった。
そっと、扉を開けると案の定シンはまだ夢の中。
布団の塊が小さく上下に動いている。
ぐっすり眠っているようだ。
ルナマリアは微笑ましさと同時に憎らしさが湧き上がるのを感じた。
「人が早起きして頑張ってるのに、こいつは全く気付きもしないで…」
だけどそれが可愛くもある。
ここからじゃ寝顔は見えないけど、まだまだ幼い顔のそれはルナマリアだけが見れる特権だ。
ルナマリアはカーテンを開け部屋中に朝日を取り入れた。
そしてベッドに近づき、布団の上からシンを揺する。
「シン、起きて。朝だよ」
「んー…」
くぐもった声が聞こえたが、一層体を丸めてシンは布団にすっぽり身を隠してしまった。